【世界遺産】熊野古道を歩く前に知っておきたいマメ知識6選(後編)

前回は熊野古道のルートや、日本の歴史から熊野古道が日本人にとってどのような存在であったのかを簡単にご紹介しました。

今回はもう少し詳細に、熊野三山をメインにご紹介していきたいと思います。

これを読めば熊野の楽しみ方、感じ方が大きく変わること間違いなしです!

4.熊野の象徴、八咫烏

%e7%86%8a%e9%87%8e%e5%8f%a4%e9%81%938(出典:bell.jp)

熊野の象徴といえば、上記写真の左に掲げられている旗に描かれた八咫烏(ヤタガラス)です。なぜこの八咫烏が熊野の象徴となったか、そのエピソードを2つご紹介します。

八咫烏のエピソード

①烏は死者の清掃者

前回の記事で、熊野はその深い山々から異界の地とみなされていたとご紹介しました。

日本では狩猟採集を主とする縄文時代ののち、平地を切り開いて開拓、稲作を主とする弥生時代に入りますが、ここ熊野では引き続き縄文文化が根付いていたと考えられています。

そんな縄文文化では、一般的な埋葬方法として水葬や風葬が行われていました。

古代から、カラスはこのようなしきたりの中で「死者の清掃者」として祀られ、それが熊野の象徴になったと考えられています。

②神を導いた伝道者

八咫烏は熊野本宮大社の主祭神である素戔嗚尊(スサノオノミコト)に仕えていたと信じられています。

そして、古代神武天皇が日本を統一した際に熊野国から大和国への神武東征で導いた伝道者としての役割を担ったとも言われています。

普段ではあまり良い印象の無いカラスですが、ここ熊野ではその象徴として大々的に祀られています。

八咫烏の意味するもの

八咫烏の特徴、それは三本足であることです。写真の八咫烏のイラストをよく見てください、足が三本生えてますよね。

この「三」という数字、熊野「三」山ではいろいろなところで重要になってきますのでよく覚えておいてください。

八咫烏の三本足は、天(神)・地(自然)・人を表していると考えられており、太陽の元で神と自然、そして人は一体の存在であることを意味しています。

%e7%86%8a%e9%87%8e%e5%8f%a4%e9%81%939(出典:originalprint.jp)

八咫烏といえば、サッカーの日本代表のロゴマークに使われているシンボルでもあります。

写真を見ると、三本足のうち一つがボールをつかんでいます。これは日本をゴールに導く、という意味で八咫烏がふさわしいと判断されたことに由来します。

5.熊野三山の意味するもの

それでは、熊野三山について見ていきましょう。

熊野三山とは、熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の三つを指します。

この熊野三山が意味するものを簡単にまとめてみました。

熊野本宮大社 熊野速玉大社 熊野那智大社
主祭神 家都美御子大神
(=素戔嗚尊)
(スサノオノミコト)
熊野速玉大神
(=伊邪那岐)
(イザナギ)
熊野夫須美大神
(=伊邪那美)
(イザナミ)
熊野夫須美大神
(=伊邪那美)
(イザナミ)
御神体/御神木 熊野川 ナギの木 那智の滝
神の司るもの
本地仏 阿弥陀如来 薬師如来 観音菩薩
仏の司るもの 未来 現在 過去

 

神話が意味するもの

「【世界遺産】紀伊山地の霊場と参詣道のスゴさが分かるマメ知識8選」でも簡単に触れましたが、主祭神のお話をご紹介します。

スサノオという神様は、初めての夫婦神であるイザナギ(男神)とイザナミ(女神)から生まれた神様です。

イザナギとイザナミは多くの神を生んだ夫婦神ですが、イザナミは火の神であるカグツチを産んだ際に、大やけどを負い、黄泉の国へいってしまいました。

イザナギはイザナミを追いかけながらも、その後大変な思いをして黄泉の国から生還します。この時にイザナギノ両目と鼻から、アマテラス、ツクヨミとスサノオが生まれました。

この三神は三貴神とも呼ばれ、それぞれ、太陽・月・海を司ると言われています。(諸説あり)

この話は、「生まれ、結ばれ、産み、そして旅立つ」という生死の物語を表しており、スサノオ・イザナギ・イザナミを主祭神とする熊野三山はこの象徴であると考えることができます。

熊野三山の神が司るもの

熊野三山の神はそれぞれ、滝・舟・川を司っています。

まるで、「滝」から流れ出た水を「舟」に乗ってわたり、そして「川」へと出る一つの流れが見えてくるようです。

それを表すかのように、「川」を司るスサノオを主祭神とする熊野本宮大社はかつて、熊野川・音無川・岩田川の合流点にある「大斎原(おおゆのはら)と呼ばれる中洲にありました。

現在でも川の参詣道として熊野川の川下りがありますが、まさにこの流れにぴったりの参詣方法です。

「神仏習合」の象徴

さて、最後に本地仏についても少しご紹介しておきます。

熊野三山の神社と仏、というのは少し奇妙かも知れませんが、これが熊野古道を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産にも選ばれた最も重要な理由である、神仏習合の象徴なのです。

前回の記事でご紹介したように、熊野古道は修験道の聖地としての地位を確立しました。

この根底にある考え方は、「苦難の行に耐えて信仰することで、浄土への道が開ける」という思想です。つまり、「苦労にも耐えて信じていれば、いつか御利益にあずかれる」という仏教の考え方があります。

このように、飛鳥時代から平安時代にかけて急速に広まった修験道と仏教が合わさって、神=仏とする思想が日本で生まれました。

このため、熊野三山ではスサノオを阿弥陀如来、イザナギを薬師如来、イザナミを観音菩薩として祀っており、三山で過去・現在・未来を救済するとの信仰が生まれました。

6.熊野三山の参詣は一ヶ所でも大丈夫!?

さて、これまでのお話で熊野三山の意味するものをご理解頂けたことと思います。そして、熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社のそれぞれが固有の意味を持っていることも。

それでは熊野参詣ではこの三山すべてをまわらなければならないのでしょうか。

実はその必要はなく、いずれかの大社に参詣することで三つの大社すべての参詣を兼ねることができるのです。

というのも、それぞれの主祭神スサノオ、イザナミ、イザナギはいずれの大社の神殿に祀られているからです。

 

いかがでしたでしょうか。これで熊野古道、熊野三山の参詣がより思いの深いものになると思います。

なお、熊野三山の熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社は三社がセットで創建されたわけではなく、それぞれ固有の歴史を持ちます。

それにもかかわらず、このように三社が互いに融合して一つの大きな信仰を創り上げているのは少し不思議に感じてしまうほどです。そして、これこそが熊野が世界遺産に含まれる所以でもあるのです。

(参考:「熊野三山」 Kankan JTBパブリッシング)

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