【日本伝統と技術の結晶】京都迎賓館を100倍楽しむためのマメ知識8選

2005年(平成17年)に、海外の賓客をもてなすために京都に建設された、京都迎賓館。

東京の赤坂離宮が「洋」で設えた迎賓館とすれば、京都迎賓館はまさに「和」の心でおもてなしをするために造られたものです。

今回は、自由参観でも十分迎賓館を楽しんでいただくための見どころを8つご紹介します!

 

1.参観方法

公開日、参観方法、予約について

京都迎賓館は、一般公開中は公的な予定が入らない限り、休館日を除いて毎日公開されています。

休館日:水曜日
参観時間:10:00~17:00
参観方法:ガイドツアー方式 もしくは 自由参観方式
予約方法:オンラインでの事前予約 もしくは 当日整理券
料金:大人1,500円、中高生700円(ガイドツアー方式)もしくは大人1,000円、中高生500円(自由参観方式)
※入館は、中学生以上。

公開日と参観方法の確認、及び予約方法についてはこちらのページをご参照ください。

ガイドツアー方式、自由参観方式は月によって変わります。ガイドツアー方式の場合、おおよその見学時間は60分ほど。

なお、当日の午前10時より当日入館分の整理券の配布も行われています。

整理券の残り枚数の状況については、京都迎賓館の公式Twitterで随時アナウンスしていますので、こちらもチェックしてみてください。

迎賓館の見どころ

それでは早速、迎賓館の見どころをご紹介していきます!

2.入口

車寄せ

こちらが正面玄関前の入口になります。

来賓を乗せた車が、通常は閉ざされている車両用の門を通って、こちらの入口まで入る、車寄せの造りです。

一枚板の扉と舟底形の天井

こちらが入口の扉です。

扉に使われているのは、樹齢700年の福井産、ケヤキの一枚板になります。そして、天井には吉野杉が用いられ、舟底形の天井になっています。

扉にも天井にも、自然の木の木目がそのまま残されているのがお判りいただけるかと思いますが、これは自然と共存してきた日本の人生観であったり、木の持つぬくもりが感じられるようにするためです。

扉の一枚板は、その高さ、幅共に見ごたえ十分ですが、これだけ大きいのに不思議と抑圧感や重厚感を感じません。

建物と調和した一体感が生み出しているのか、それとも木のぬくもりや優しさがそうさせるのか、日本人の心を表しているようです。

3.玄関口

入口を入ると、そこから庭園を囲むように長い渡り廊下が続いています。

京都迎賓館に入ると、建物内を遮る柱がほとんど目につかないことに気づきます。そして、柱が無い分、空間が開放的になり、広く感じるとともに、建物の中央に造られた庭園を、パノラマ感覚で楽しむことが出来るのです。

このようなさりげない、意識しないと気づかない気配りがいたるところになされていますが、実はそれを実現するためにはかなり高度な技術を要するのだとか。

ちなみに、京都迎賓館を建設するにあたり、大切にした理念が、「庭屋一如」という考えだそうです。

これは、家屋と庭に一体感を持たせ、庭の景観が家屋にも融合することを目指したもので、庭園を取り巻く回廊もその表れと言えます。

上窓と障子
光の演出

京都迎賓館には、430枚もの明障子があるそうです。

和紙を用いた明障子を使うことで、太陽の光が和紙を通って、柔らかい陰翳を室内の床に映し出します。

また、壁上に窓を設けることも、光を取り入れる効果があると思われます。

さらに、障子を使うことで一面壁による抑圧感も軽減され、ここからも開放感が生み出されているのです。

改めて、日本の伝統である和紙や障子の素晴らしさを感じずにはいられません。

余計なものを隠す

ちなみに、障子の敷居が空調の吹き出し口になっているそうで、こちらもそのような設計を実現するのには、かなり高度な技術を要するのだとか。

まさに匠の技、ですね。

大きく造られた障子

また、京都迎賓館の障子は、通常の家庭の障子に比べてやや大き目のサイズに造られています。

これも、海外からの賓客をもてなすにあたって、そのお客様の目線に立ってちょうどよいサイズとして造られたものだそうです。

京指物の行灯

障子の足元にさりげなく置かれているのが、京指物の行灯です。

こちらも木で造られており、障子、床、天井の中に溶け込んでいるようです。

京指物は、一切釘を使わず、ホゾ(木と木をはめ込んで組み合わせるため、片方の穴に差し込むために造られた突起)を組み合わせることで板や木を指し合わせる木工芸のことです。

そのデザインにも目が行ってしまいますが、このような形を、釘や接着剤などを用いずに作るというのは凄いですよね!

4.聚楽の間(待合スペース)

こちらが、聚楽の間(ロビー)です。

壁際には玉染による、白と藍色の一双の屏風、その手前に西陣織の生地を用いた椅子。さらにその中央には人間国宝の早川尚古斎氏による竹花器が置かれています。

玉染は奈良時代から続く染色法で、何枚にも張り合わせた美濃紙を燻製にして防水性を高めて、紙に彫った型に防染糊を付けて染め上げる手法です。

奈良時代からの手法に、京都の伝統西陣織、そして人間国宝による編組物(2種類の竹を交互に編んで、立体的に造られた工芸品)と、日本の伝統技術がここにも集結しています。

生け花によるもてなし

中央の竹花器は、一般公開時には何も花が飾られていませんが、来賓をお招きする際には、その来賓の国で親しまれている花や季節に合わせて、花が飾られるそうです。

壁に付けられたも友好の証

屏風の上に目をやると、壁の付けられた木の枠に何やら紋様のような飾りがされてあるのが分かります。

これは、「釘隠」と言って、その名の通り、壁に打ち付けられた釘の頭を隠すために取り付けられる飾りです。

聚楽の間の釘隠は、千代結びのデザインとなっていますが、これは友好の証を表したもの。

2つの円が、互いに結ばれて繋がっていることから、来賓国と日本との間の友好の証を形にしたものです。

人形の置物

聚楽の間には、そのほかにも写真のような可愛らしい人形がさりげなく置かれていました。

こちらに置かれている人形は、季節や行事に合わせて定期的に変更されているようなので、訪れた時にぴったりな置物に出会えるはずです。

5.夕映の間(大会議室)

こちらの夕映の間は、会議に用いられる部屋になっています。

部屋の両側には、写真のように、壁全体を使った大きな絵が飾られているのが特徴です。

実はこれは絵ではなく、巨大なタペストリーになっているんです。

京都の代表的な景観がモチーフのタペストリー

間近でよく見ると、タペストリーであることがよく分かります。

絵ではなく、織物のタペストリーで表現することで、この部屋一面に敷かれているカーペットとも相性がよく、何とも言えない暖かい、柔和な雰囲気を作り出しています。

タペストリーは、もともとはヨーロッパで古くから引継がれてきた織物技術です。

京都のモチーフをヨーロッパの織物を使って表現することで、友好関係を示しているかのようです。

ちなみに、2つのタペストリーは、京都の代表的な山、愛宕山と比叡山をモチーフにしています。

それぞれ、題名が「愛宕夕照」、「比叡月映」となっており、それぞれから1文字ずつをとって、「夕映」の間と名づけられました。

枯山水の庭園

夕映えの間からは、写真のような枯山水を望むことが出来ます。

この枯山水に置かれているのは、自然の石ではなく何やら金属の置物のよう。

夕映の間の床のカーペットは、写真の通りグレーのストライプがかかった模様になっています。

これは、グレーの差し色を付けることで、床が立体的に見えるような効果があるそうです。

先ほどの枯山水とこちらの床の色が調和しているので、枯山水がまるで部屋の中にまで続いているかのような一体感を生み出しています。

室内の仕掛け

次に、天井の方に目を向けると、何やら上の方に四角い枠が見えます。

これは、こちらの部屋が会議室に用いられることに関連して作られた装置で、会議中はこちらに翻訳された文字が映されるそうです。

実用的な機能も兼ね備えつつ、それが部屋の雰囲気や景観を損なわないよう、最大限の工夫がされているのがよく分かります。

また、天井の照明を良く見ると、照明の中に小さな斑点のような模様があるんです。

これも、照明を暗くした際に、天井がまるで星空になるかのような仕掛けになっているからだそうで、照明を落とした時、どのようになるのか、是非とも見てみたいところですね!

違った姿を見せる庭園

あいにく撮影日は雨でしたが、それでも庭園の美しさには目を奪われるばかりです。

池の中央には、円形と方形の石のオブジェが置かれていて、絶妙なバランスを生み出しています。

その先に植えられているのが、日本の田んぼをイメージした植物です。まるで稲穂のようですよね。

6.藤の間(晩餐室)

こちらの大広間は、藤の間。晩餐会用の部屋で、京都迎賓館の中でも最も大きな部屋になります。

なんといっても目に付くのが、真正面の壁に大きく描かれた見事な花のタペストリーです。

その大きさは、幅16.6メートル、高さは3.1メートル!

なお、この部屋には舞妓などが芸を披露する舞台装置も用意されています。

「麗花」

間近で観ると、1つの大きな絵の中にいくつもの草花が描かれていることが分かります。

こちらのタペストリー、題名を「麗花」と言い、藤の花をモチーフとして、タペストリーには全部で39種類もの花が描かれているというから驚きです。

こちらの部屋の名前にもなっている、「藤」という花は、花言葉が「歓迎」となっていて、まさに海外からの賓客をもてなすにはぴったりというわけです。

正面の「麗花」からそのまま視線を落とすと、床のカーペットにも藤の花びらがまるで舞っているかのように美しく描かれていることに気づきます。

壁と床を使って、立体的な世界観を演出しているのは、さすがというほかありません。

截金(きりかね)と錺金物

こちらの写真には、木の扉に見事な黄金と白の模様が描かれています。

これは、截金(きりかね)といって、金箔やプラチナ箔を焼き合わせたものを、筆を使って扉などに張り、紋様を描く手法です。

また、藤の間も壁にはめられた木の枠に注目してみると、金色の飾りがついていることが分かります。

これは、「錺金物」といって、組紐をデザイン化したもので、「絆」を表現しています。

この錺金物の技術は、なんと弥生時代から伝わっている技術なんだそうです。

7.桐の間(大広間)

こちらが、これまでの部屋とは一変、和風にデザインされた桐の間。

天井には、12メートルのスギから作られた一枚板が使用されているのが、注目です。

中央に置かれた黒い座卓は、こちらも12メートルの漆の一枚仕上げとなっていて、座卓の下は掘りごたつになっています。

正座に慣れていない海外の賓客を考えた造りになっているというわけです。

五七の桐

こちらの桐の部屋、その名の通り、壁や座椅子の裏側など、多くの場所に「五七の桐」が描かれています。

これは、政府の紋章であり、500円玉に描かれていることで、我々の身近なところでも目にしているものです。

畳のヒミツ

こちらの桐の間に敷き詰められた畳、よく見ると、真ん中にうっすらと帯のような線が見えませんか?

これは、2本のイ草を継いで縫った「中継ぎ表」と呼ばれるものなのだそうです。2本が合わさって密度が濃くなるので、そこだけ色が違って見えて、桐の間のように縦に敷かれた畳だと、まるで1つの帯のように見えるのです。

ここにも職人のワザが隠れているんです。ぜひ、注目してみてください!

鏡のような漆塗りの座卓

桐の間の中央に置かれた座卓。その黒くて平らな造りは鏡そのものです。

写真のように、座卓の表面に、壁に描かれた山水画が反射されて写っていることがよく判るかと思います。

これが、壁側から見た場合、目の前に広がる美しい庭園が、この座卓の上に鏡のように映し出されるのです。

まさに、最初にお話しした「庭屋一如」がここに現れています。

パノラマサイズの庭の景観

桐の間に限らず、各部屋からは、中央に広がる見事な庭園を楽しむことが出来ます。

実はここにも隠れた技術があるのですが、お判りでしょうか。

庭園を楽しむために、その妨げとなる窓枠の柱を極力置いていないのです。

なので、大きな鏡の先に見える庭園を、そのままの姿で観ることが出来ます。

壁の柱を無くすと、美しい景観は保たれますが、それを実現するためには、高度な建築技術が求められるのです。ここにも、日本の近代建築の技術力が現れています。

8.庭園

最後に、京都迎賓館の顔とも言える、庭園について少しご紹介しておきます。

こちらの庭園は池を中心として、その真ん中に廊橋が架けられていますが、この廊橋を挟んで、見える景色にも少し変化が出ているように感じることと思います。

片方の池には優雅に泳ぐ鯉の姿も楽しむことができます。

透かし彫りの昆虫たち

庭園に架けられた廊橋の四隅には、昆虫の透かし彫りがされています。

注意深く天井を見ないと見逃してしまうと思いますので、ぜひチェックしてみてください!

描かれている昆虫は、チョウ、鈴虫、トンボとコオロギです。いずれも日本の原風景には必ずいる、身近な昆虫たちですよね。

回遊のための舟

庭園の池を楽しむために、舟までも用意されています!

もちろん、こちらの舟は実際に乗って池を回遊することが可能です。

これまで訪れた来賓の中でも、ブータン国王と王妃が実際に舟に乗って庭園を楽しまれました。

 

以上、いかがでしたでしょうか。

今回ご紹介した部屋以外にも、まだ水明の部屋などがあり、公開日やツアー方式によっても参観できる範囲は違っているようです。

ですが、どの部屋も、天井から壁、そして床や調度品に至るまで、1つとして見逃せないものはなく、いずれにも日本古来から伝わる伝統や技術が散りばめられています。

訪日外国人だけでなく、我々日本人にとっても、改めて日本の良さや伝統、文化を今一度体感できる場所ですので、ぜひ一度訪れてみてください!

 

(参考:「京都迎賓館」迎賓館京都事務所 淡交社)

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