ひとり旅コラム

UNWTO(世界観光機関)、旅行&観光業を通じた雇用や経済回復に向けた23の提言を発表

長引く新型コロナウイルス(COVID-19)による影響で、日本だけでなく全世界に経済をはじめとする大きな影響が出ており、特に観光や旅行産業は最も影響を受けている産業の1つと言えます。これに対し、UNWTO(世界観光機関)は新型コロナウイルスによる社会経済への影響を緩和し、スムーズな社会経済の回復に向けた23の提言を発表しました。

今回はこの提言の概要をご紹介します。

UNWTO(世界観光機関)の提言概要

#TRAVELTOMORROW

UNWTOがまとめた提言の文書の初めに、ハッシュタグとともにあるキーワードが大きく表示されています。それは、「#TRAVELTOMORROW」という言葉。

やや意訳をするとすれば、「旅ができる明日に向かって」という感じでしょうか。

つい数か月前までは、飛行機が忙しく世界中を飛び回り、人や物が世界中に飛び回っている世界が日常でした。好きなだけ国内や海外を旅をすることが当たり前だった世界が一変、今ではほとんどの国で海外からの渡航者の入国制限を課しています。

正直、たった1か月~2か月の間に世界がこのような状況に一変してしまったことが、現実でありつつも時々、夢ではなかろうかと思う時があります。

当たり前に旅をすることができる世界がどれだけ平和か、今ではそのことを痛感している人が多いのではないでしょうか。

1日でも早く、旅が普通にできる世界に戻ることを祈り、一人一人ができることを辛抱強く継続する以外、私たちが今できることはありません。

新型コロナウイルス(COVID-19)と旅行・観光業の現状

UNWTOは新型コロナウイルス(COVID-19)の現状について、まずCOVID-19を完全に封じ込め収束させることが最も重要であるとしつつも、COVID-19の影響で何百万もの職が失われ、世界経済の減退が始まっており、その中でも旅行・観光業は最も大きな影響を受けている産業であり、その影響を少しでも緩和するための施策が至急必要な状況にあると発表しています。

旅行・観光業の効果と存在意義

その一方でUNWTO(世界観光機関)は旅行・観光業の存在意義として、大きく次の2つを強調しています。

  • 旅行・観光業は新しい機会の創出のきっかけとなるだけでなく、文化や価値観、言語などが異なる国に対する理解を深め、連帯感を強める
  • 世界の自然、文化的な遺産を守るだけでなく発信することにつながる

また、COVID-19の影響を前向きに捉える点として、旅行・観光業の在り方や枠組みを改めて見直し、変えていくきっかけになるとも記しています。

そして、このことは全世界で取り組みに向けて動き始めているSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」にも大きく関係してくると述べています。

UNWTOは今回発表した提言を定める上で、その目的を以下の2つに求めています。

  • 旅行業・観光業を守ることは、世界の雇用を維持し、人々の生活を守ることにつながるだけでなく、どのような発展ステージにある国であっても新しい雇用の創出と安定的な経済につながる
  • 旅行業・観光業は他の産業の回復にも寄与する

観光業・旅行業を通じた社会経済の回復に向けたUNWTO(世界観光機関)の提言

UNWTO(世界観光機関)は、観光・旅行業を通じた社会経済の回復に向けて23の提言を発表しました。
この23の提言は大きく以下の3つのグループに区分されています。

①危機管理を行い、その影響を緩和する
②経済刺激策を積極的に打ち出し、一刻も早い回復につなげる
③未来に向けた適切な準備を始める

これらの3つの枠組みに区分された23の提言を見ていきましょう。(原文はこちら)

※なお、以下の内容はUNWTOが公表した資料を個人的に翻訳したものであり、その適切性、正確性を保証するものではありません。

①危機管理を行い、その影響を緩和する

企業が雇用を維持するために必要な刺激、支援策を打ち出し、特に自営業や中小企業など事業存続が危ぶまれるセクターを守る

・特別な経済刺激策や対策予算を創設する

・自営業者の雇用を守る制度を設計する

・従業員の福利厚生に関して、より柔軟な手続きを実施する

・解雇ではなく、就業時間の短縮など部分的な雇用削減の仕組みを導入する

・企業と従業員組合の連携を深める

・従業員の雇用リスクを緩和する施策を打ち出す

・特に脆弱なセクター(女性、若者や地域経済など)に関して、特別支援策を打ち出す

企業の流動性を維持する

・観光業・旅行業など、特に影響の大きい企業への財政支援を行う

・社会保険や財務支払いなどを免除するなど、例外的な取り扱いを策定する

・観光業・旅行業でも特に中小企業の流動性を確保するための投資スキームを策定する

・企業の運転資本を確保するため、新たな流動性が確保できる金融商品を供給する

・社会保険の支払いを繰り延べられる容易な手続きを整備する

運送・鉄道や観光セクターに影響を与える税金、手数料や規制を見直す

・消費税や法人税を含み、観光業・旅行業の税金や手数料徴収を一時的に免除、もしくは減額する

・例えば観光業・旅行業事業者の空港におけるオペレーションの割り当てに関するルールなど、柔軟に変更、設定できる仕組みを構築する

顧客を守り、消費行動を回復させる

・プライベートセクターと連携して、例えばチケットのキャンセル対応や予約変更など顧客対応に向けて連携を図る。

・顧客の消費行動を維持するため、例えば航空チケットなどを2020年の年末まで振替可能にする。

とくにITに関するスキルの改善を奨励する

・未就職者に対して、スキルの習得支援プログラムを提供する

・オンライントレーニングセッション等の提供を行う

・観光業・旅行業の将来に役立つ、IT技術の習得を支援する

・影響を受け事業を停止せざるを得ない観光業・旅行業の事業者に対し、国の財政支援により研修プログラムを提供する

観光業・旅行業を地域や国、世界の経済対策の対象に盛り込む

・観光業・旅行業を国や世界における緊急対策、緩和、支援パッケージの対象に加え、その対策を行う

危機管理メカニズムや戦略を策定する

・顧客や消費者に向けたメッセージを統一する

・旅行業の将来の回復に向け、世界的に危機対応戦略を策定する

②経済刺激策を積極的に打ち出し、一刻も早い回復につなげる

観光業への投資や事業活動に対して財政支援を行う

・デジタルトランスフォーメーションや新しい雇用、研修などを促す財政支援

・インフラ整備や特に観光産業に関する海外資本の投資の誘致

・トラベルテックなど、観光業・旅行業のサプライチェーンの統合や破壊的変革を起こすような革新的なサービスへの投資

運送・鉄道や観光セクターに影響を与える税金、手数料や規制を見直す

・法人税や空港利用税、宿泊業や飲食業での消費税の免税や減額

・COVID-19の沈静化後に、空輸の自由化など経済回復に向けた施策の促進

・航路などに関する国際規制の見直しを行い、CO2排出削減を実現する

旅行の円滑化を促進する

・渡航情報など、旅行や観光に関する情報を常に公表し、最新の信頼ある情報を提供する仕組みを作る

・一時的な入国を許可する観光ビザに加え新たなビザ制度やより自由度の高い観光を可能にするような枠組みの創設。E-visaやビザの緩和など。

特にIT分野において、新しい雇用や技術獲得を奨励する

・新しい雇用の創出や、特にITに関するスキルの習得などにつながる特別なプログラムの新設

・観光業・旅行業における起業・創業をサポートする特別プログラム、制度の設置

・女性や若者、身体不自由者への平等な対応

経済回復プランや経済刺激対策の中心に、持続可能な事業環境を掲げる

・COVID-19からの回復を新しい持続可能性の創出や消費に向けた新たな機会と捉えた対応を行う

市場環境を理解し、需要を刺激するとともに消費行動を促す

・休日を見直し、年末に新たな休日を設けたり、会社も従業員の休暇を促すことでCOVID-19沈静後の消費行動を活性化する

・国内の観光や旅行など、COVID-19の沈静化後に急速な回復が見込まれる産業に関して、特別なプロモーションを打ち出す

・COVID-19の流行期を勘案しながら、観光業におけるオフピーク対策を打ち出す

マーケティングやイベント、ミートアップなどを活性化させる

・地域でのイベントやミートアップなどの開催に対する財政支援を行う。

・旅行や観光、イベント参加への費用や参加料の免除や一部減額を検討する。

・観光業や旅行業をより活性化させるようなサービス、マーケティング活動に財政支援を行う

事業提携、協業に投資する

・協業や提携における基本的な活動計画や明確な目標の設定、より包括的なアプローチや経営資源の配分などを策定する。

観光業を地域、国及び世界的な経済回復プランや発展支援の中心に捉える

・観光業をCOVID-19沈静化後の経済刺激対策の中心に盛り込む。税額免除や輸出の促進、雇用の維持など。

③未来に向けた適切な準備を始める

マーケット、プロダクトやサービスの多様化を促進する

・国内観光やより広域の旅行を、移動や交通の利便性を確保する、観光情報への接続を容易にしたり、各地域での連携した観光プランのプロモーションなど、より魅力的な観光をアピールする。

・COVID-19の影響により変化した消費者、顧客の行動やニーズを理解する

・地域などより脆弱な団体にたいして、新しい観光サービスやパッケージをデザインするなど観光による地域創生をサポートする

デジタルトラスフォーメーションやマーケットインテリジェンスへ投資

・観光業への影響や発展に向けた短期的な市場モニタリングを可能にするデータ分析や協業への投資

・デジタルトランスフォーメーションを促し、公共とプライベートセクターが連携してイノベーションを起こすエコシステムを創出する

観光業への監督、管轄を強化する

・地域やプライベートセクターにおける観光業に従事する観光ガバナンスの仕組みを構築し、観光業の発展に向けた官民一体の枠組みを作る

・地域レベルで持続可能な観光産業を創出すべく、DMO(Destination Management Organization:観光地経営組織)を促進し、発達させる

・市民の声やフィードバック、要望をくみ上げるプラットフォームの構築

将来の危機に備え、弾力性を持ちつつも世界の緊急対応メカニズムの中に観光業を組み込む

・観光業や旅行業を国の緊急対策、制度に組み入れる

・観光業における危機対応計画を策定するなど、来るべき危機に向けた十分な準備の原則を策定する

人的資源や人材育成への投資

・十分な教育やトレーニングプログラムを作り、将来の弾力性のある働き方に向けた対応

・旅行業・観光業と大学、教育機関や企業リーダー、先端のIT技術者が連携して将来の働き方に向け必要とされる新しいスキルの取得推進、将来の旅行業観光業において必要とされるスキルや技術の習得を目指す

・雇用における均等な機会や雇用の在り方に向けたの原則を尊重する

世界の協議事項として、持続可能な観光業の在り方を採択する

・観光業を国における重要施策と位置付け、新しい雇用の創出や経済回復をけん引する重要な産業であることを認識する

経済の循環を促進し、SDGsへの取り組みを進める

・SDGsの取り組みの枠組みに沿って、旅行業に関しても持続可能な発展に向けた実行や定義、修正を継続して行う

・この試練を成長の機会と認識し、観光業や旅行産業における既存の慣習や商流の見直し、環境への配慮などより弾力性のある発展を目指す

UNWTO(世界観光機関)の提言から考えること

いかがでしたでしょうか。世界的な期間が公表した提言ということもあり、また原文が英語なのでヨコ文字が多く、その内容もぼんやりと抽象的なものばかりではありますが、少なからずUNWTOの思惑や考え方は伝わってきます。

日本においても、飲食業と観光業、旅行業は人々の活動自粛により最も深刻な打撃を受けている産業であり、事業者の方が悲鳴を上げているニュースを目にするたびに何もできない歯がゆさ、もどかしさを痛感する毎日です。

きっと新型コロナウイルス(COVID-19)が沈静化して、日常の世界が戻ってこれば多くの人がずっと我慢してきた発散をするために、観光や旅行が賑わうのではないかと期待しています。

また一方で、UNWTOの提言にも含まれているように、新型コロナウイルスの猛威によって人々の行動や考え方、志向性に少なからず変化が起こるのでは、とも考えており、それが観光業・旅行業にどのような変革をもたらすのかも注目したいポイントです。

皆さんは旅ができる日常が戻ってきたらどんな旅をしたいですか?その日が来たら真っ先に旅に出られるよう、今はいろいろな情報を見て旅の計画を組み立てる楽しい時間に充てていただければと思います!

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