インドネシアのジョグジャカルタは、王宮を中心としてジャワの宇宙観や哲学思想に基づいて設計された世界遺産です。今回は世界遺産として登録されている南北の通りと歴史的建造物群を実際に歩いた様子をご紹介!
(はじめに)ジョグジャカルタの世界遺産の内容は?
構成遺産の内容
インドネシアの古都、ジョグジャカルタは2023年に「ジョグジャカルタの世界観を表す軸線と歴史的建造物群」として世界遺産に登録されました。
世界遺産の登録名を見ても、いまいちその内容がよく分かりませんよね。
簡単に言えば、ジョグジャカルタの街自体が、この地域(ジャワ)特有の思想を表すように設計されている、ということです。
まずは世界遺産に登録されている構成遺産を地図とともにご紹介します。

Map data from OpenStreetMap
なお、上図の地図上でクラトン(王宮)として示しているポイントは王宮の場所ですが、世界遺産に登録されているのは王宮だけでなく南北にある四角形の広場(アルンアルン広場)なども含んだエリアとなります。
この地図を見ると、北の「トゥグ」から伸びている線はクラトンでいったん途切れますが、南の「パングン・クラピャック」までほぼ直線状に伸びていることがお分かりいただけるかと思います。
世界遺産の名称にもある「世界観を表す軸線」というのは、この南北に伸びている通りが示す直線上の軸のこと。
そして、同じく世界遺産の名称にある「歴史的建造物群」というのはこの軸線以外に上図に示された建造物や施設の名前のことです。
詳しくはこの後の街歩きパートでご紹介しますが、簡単にそれぞれの建造物や施設の内容も記載しておきます。
- パングン・クラピャック:通りの中央に置かれたモニュメント
- タマン・サリ:かつての王宮庭園
- カウマン・大モスク:イスラム教のモスク
- ブリンハルジョ市場:繊維店などが立ち並ぶマーケット
- ケパティハン複合施設:ジョグジャカルタ特別州知事公舎・州庁舎
- トゥグ:交差点の中央に置かれたモニュメント
地図からはクラトンが中心に位置していること、そしてそこから南北に伸びている通りが一直線になっておりその東西に建造物が設置されていることが分かりますが、これらが一体となって「ジョグジャカルタの世界観」を表している、というのが世界遺産の意味するところです。
それでは「ジョグジャカルタの世界観」とはどのようなものでしょうか。
「ジョグジャカルタの世界観」とは?
世界遺産の名称にもある「世界観」は英語では「Cosmology」(宇宙観)という言葉が使われています。
そこから考えると、「世界観」の「世界」というのは物理的な宇宙というより、その宇宙も含めて自然や創造主(神)、人間社会など私たちを取り巻くありとあらゆるもの、というニュアンスであると筆者は考えています。
そして、「世界観」は自然や宇宙、神、社会など人間を取り巻くあらゆるもの(世界)に対して人間としてのあるべき姿に関する思想、と言えるでしょう。
ユネスコの世界遺産委員会が公開している文書には次のような説明があります。
軸の方向とその軸に沿って配置されている建造物は、以下のジャワの哲学的思想を物理的に表現するように設計されている。
・人間の一生、特に生命の循環(Sangkan Paraning Dumadi)
・理想的に調和した生き方(Hamemayu Hayuning Bawana)
・人間と創造主(神)とのつながり(Manunggaling Kawula Gusti)
・小宇宙と大宇宙
(Doc 「Decision 45 COM 8B.39」の英文を意訳)
本記事でご紹介するジョグジャカルタの世界遺産街歩きは、上記のジャワの哲学的思想のうち、「Sangkan Paraning Dumadi」との関連をお話ししながらご紹介します。
「Sangkan Paraning Dumadi」という言葉(ジャワ語)は「Sangkan Dumadi」と「Paraning Dumadi」が組み合わさったものであり、それぞれ「生命の誕生」と「来世への道」というような意味を持つそうです。
つまり、人(生命)が誕生して子ども、少年、青年と成長し、異性と出会いやがて新しい命を宿すまで(Sangkan Dumadi)、そして大人になってさまざまな誘惑や欲に惑わされながらも人として成熟し、やがてその生命を終える(Paraning Dumadi)まで、まさに人間の一生ということになりますが、これが街全体で表現されている、ということ。
まだ頭に「???」マークが残っているかもしれませんが、ジョグジャカルタの街歩きをしながら、どういうことか見ていきましょう。
クラトン南エリアの軸線:生命の誕生から次の生命を宿すまで(Sangkan Dumadi)
パングン・クラピャック
世界遺産・ジョグジャカルタの軸線に沿った街歩きは、まず最南端にあるパングン・クラピャックが起点。
ジョグジャカルタの街の設計上は南が起点になるのですが、アクセスとしては鉄道駅がある北側と反対方向ですし、街の中心部からバス、トゥクトゥク(タクシー)又は歩いてもそれなりに時間がかかる不便な場所にあります。

南北に走る通りを歩いていると、突如としてこのようなモニュメントが出現します。
建物の造り自体はシンプルで、中に入る入口も設置されていますが、筆者が訪れた夕方18時前には写真のように閉じられていました。
一見なんの変哲もない建物に見えますが、これはヒンドゥー教における女性のシンボルを表現したもの(ヨニ)です。
また、かつてここは鹿狩りで捕らえた鹿を閉じ込めておく建物だったそう。
一説では、このように鹿を閉じ込めておくことはイスラム教における生命の段階の内、「アルハム」という「母の子宮の段階」を象徴したものと考えられており、これは、胎児が支給に宿り、これからまさに魂が吹き込まれることを意味しています。
先ほどのヒンドゥー教におけるヨニの象徴であるとともに、イスラム教においてもアルハムの段階を示すことから、この建物が「生命が誕生する場所」としての意味を持つわけです。
ちなみにここはロータリーのようになっていて、バイクや自動車は時計回りに走っていました。
夕方は人通りや交通量もそれなりにありますが、ここはそんな騒がしい日常に埋もれているような感じで神聖な雰囲気は全くありません。
筆者が周りをうろうろしていると、Grab(配車アプリ)の人が客と間違えて声をかけてきたので、Grabのピックアップポイントとして日常に溶け込んでいるようでした。
パングン・クラピャックから北の通り

パングン・クラピャックから北に通りをまっすぐ進んでいくと、王宮エリアを取り囲む外壁の南門にぶつかります。
この通りは王宮の北側にある街の中心地、マリオボロ通りに比べるとよりローカルな雰囲気で夕暮れ時はたくさんの屋台が道沿いに並んでいます。
訪れたのがご飯時だったからか、バイクを屋台に寄せてテイクアウトを買っていく地元の人をよく見かけました。

ジョグジャカルタには本当にたくさんの屋台があって、売っているものも様々。
写真に書かれている「SIOMAY」というのは魚のすり身団子などを甘くてコクのあるピーナッツバターやチリソースに付けて食べる料理です。
確か15,000ルピアぐらいだったので日本円だと140円弱といったところ。安い!
テイクアウト用にビニール袋に入れて提供してくれます。
屋台のおばちゃんもフレンドリーで、日本人と分かると「SAPPORO!」と、おそらくビールのことだと思いますが、知ってる日本語を話しかけてくれました。そのチョイスが謎ですが。
これ以外にも多くのローカル料理(バクソやサテなど)やドーナツ、ポテトチップスなど、屋台を見て回るだけでも楽しめちゃいます。
また、通りを北に進んで東側のエリアにはおしゃれなお店やホテルが立ち並ぶエリア(Prawirotaman通り)があって、観光客(特に欧米)向けのような雰囲気でした。
クラトンに向かう通りの両側には、ジャワタマリンドとタンジュンという木が多く植えられています。
これらの木は若さの象徴と考えられており、一説ではジャワタマリンドは若い娘、春の若葉は恋心や愛情を表し、タンジュンの木は徳のある子どもを表しているとされています。
先ほどのパングン・クラピャックは生命の誕生(=赤ちゃん)とすると、そこから北に進むこの通りは少年・少女の時期を表したものと言えそうです。
プレンクン・ニルバヤ(Plengkung Nirbaya)

通りを北に進むと、クラトン(王宮)エリアを取り囲む外壁の南側の門、プレンクン・ニルバヤ(Plengkung Nirbaya)があります。
2026年6月現在は門が閉じられており、自動車はもちろん人も通り抜けることができませんでした。(このため、上の写真はクラントン側から撮影したものです。)
この外壁、それなりの長さで南側の両端の距離をGoogle Mapで測定すると約1.3キロという長さに。
王宮エリアから外側のエリアへ抜ける道は東西と南側はそれぞれ1つしか無く、ここが閉鎖されると大きく遠回りする羽目になり、交通の面からは不便な設計になっているのですが、これも利便性より思想や伝統が優先されている表れでしょう。
この門はスルタンにとって重要な意味を持っており、スルタンが亡くなるとそのご遺体はこの門を通ってイモギリ王墓に運ばれます。
このため、スルタンは生きている間にこの門をくぐることはありません。
門の名前にもなっているニルバヤは
「Nir」=”存在しない”
「Baya」=”危険”
と、「危険がない」という哲学的な意味を有しており、この門をくぐることで「現世の誘惑から解放される」ことを意味しているそうです。
人々の生涯は南から北に進んでいく一方、王族のスルタンはクラトンから南に向かう、というのも面白いですね。
アルンアルン広場(南)(Alun Alun Kidul)

プレンクン・ニルバヤ門を北に進むと、中央に大きな二本の樹が並ぶ広場に出ます。
この広場はアルンアルン広場と呼ばれており、住民憩いの場所です。
クラトンを挟んだ北側にも同じような広場(Alun Alun Utara)が設けられていますが、北側の広場は入ることができません。

中央の二本のガジュマルの木はとても大きくて、日差しが強いジョグジャカルタの昼間でも木陰は涼しいです。
昼間はそれほど人はいませんが、シートを広げたり地べたに座って談笑するなど思い思いの時間を過ごしていました。
ちなみに、Masanginと呼ばれる遊びがあり、この広場で目隠しをして二本のガジュマルの木の間をくぐり抜けることができればその人に幸運が訪れる、と言われているそうです。
あなたも挑戦してみては!?
この広場は成長した男性が女性に求愛する段階を表しているのだそう。
ここにはクウェ二、パケルという木があるそうで、パケルの実は熟さなければ食べられないことから、
”若者は慎重に判断しなさい”
という教訓を、クウェニは
”愛する女性へ求婚する勇気”
の象徴を表しているという説があることからも、男女の出会いを示していることが分かります。
また、地図でこの広場を見てみると、東西と南側に計五本の通りとつながっていますが、この「五本の通り」も五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を表しています。
青年期を迎え、成人になり男女が出会うとともに様々な経験を通して世界を知っていくー
筆者はそんな風に感じましたが、皆さんはいかがでしょうか。

ちなみにこのアルンアルン広場、夜はまたガラッと印象が変わってナイトマーケットに様変わりするんです。
広場を取り囲む通り沿いにずらっと屋台が立ち並び、昼間とはうってかわって賑やかな雰囲気を楽しむことができます。

あと、ちょっとしたアトラクションとして電光装飾された乗り物も。
これに乗って広場をぐるっと一周回るだけで、しかもスピードは走るのと同じくらいのゆっくりさ。。
サソノ・ヒンギル(Sasono Hinggil)

アルンアルン広場の北側に隣接しているのがサソノ・ヒンギル(Sasono Hinggil)という建物です。
この建物は神聖な空間であるクラトン(王宮)への入口の役割を持っていますが、今は伝統芸能の上演が定期的に上演される場として使われています。
この建物空間は、人生で男女が結ばれ、新たな過程を築き始める段階を表しています。
そしてこの空間そのものが、新しい命が宿り、赤ちゃんが誕生する準備を整える場所として構想されているのです。
さらに、この広間の周囲にPamengkang(パメンカン)と呼ばれる内部通路があり、この通路は
”出産を間近に控えた女性が脚を開いた姿勢”
を表現するように設計されています。(Pamengkangが脚を広げる、という意味)
いかがでしたでしょうか。
パングン・クラピャックから始まり、サソノ・ヒンギル、つまりクラトンまでの道のりは生命が宿り、少年・少女、青年、成人を経て異性と出会い、やがて新しい家族を築くとともに新しい命を宿す、人のライフステージそのものであることを体感していただけたでしょうか。
これがジョグジャカルタの南の軸線となりますが、続いては北の軸線についても歩きながらご紹介しましょう。
クラトン北エリアの軸線:人の成熟から生命の終焉まで(Paraning Dumadi)
トゥグ(Tugu Monument)

続いてクラトン北エリアの軸線を歩いてみます。
北の起点は写真のトゥグと呼ばれている記念碑のような建造物です。
この記念碑も南のパングン・クラピャックと同じように道路の真ん中に建てられていますが、交通量も道路の幅もパングン・クラピャックの比にならないくらい大きく、都市の大動脈といった印象を受けます。
南北、東西の道路が交わる交差点の中央に堂々と建てられているわけですが、それぞれの角には二階のベランダから道路を見渡すことができるカフェや、ジョグジャカルタの世界遺産に関する模型が置かれたりしているので、ちょっとした観光スポットとです。

こちらがジョグジャカルタの世界遺産を表す模型で、そばには世界遺産の案内板も設置されています。
模型は正直ここまで大きくする必要があったのか(トゥグやクラトンが小さすぎる、、)、というサイズ感ですね。
写真奥にトゥグに似た白いモニュメントのような塔が見えるかと思います。これが当初のトゥグの姿で、今のトゥグは1867年の大地震で倒壊したものを1889年に建て直したものなんです。
トゥグはその形状からも、ヒンドゥー教において男性の象徴であるリンガを表しているとされています。
南側のパングン・クラピャックが女性の象徴(ヨニ)であることと対になっているのがお分かり頂けると思います。
トゥグからクラトンに向かう北の軸線は、人が成熟し、やがて生命が尽きるまでを表していることから、トゥグは人間の成熟の形でもあると考えられます。
トゥグは、最初にお話しした4つのジャワの哲学的思想の内、「人間と創造主(神)との調和」を象徴する建造物として造られています。
当初のトゥグの形状は、円柱状の柱(ギリグ:Gilig)の上に球体(ゴロン:Golong)が載せられていたことから、「Tugu Golong-Gilig」と呼ばれていました。
球体と円柱の柱が結びつきは、王と民が団結して侵略者に立ち向かう精神を象徴しており、これは王だけでなく創造主(神)と人間との結びつきも表しているとされています。
今のトゥグの形状が当初のものと変わっているのは、再建した当時はオランダの支配下にあり、王と民が団結してオランダに抵抗する意思をそぐため、と言われています。
また、このトゥグはハメンクブウォノ1世がメラピ山へ向かって瞑想を行う際の目印としても使われたそうです。
Mangkubumi通り

トゥグから南に進むと、ジョグジャカルタ駅の東側に出ます。
線路が東西に通りを横切るように走っており、線路のすぐ北側にはジョグジャカルタのモニュメントも飾られていました。
線路を超えて南に進むと、街の中心エリアのマリオボロ通りへとつながっていきます。
Malioboro(マリオボロ通り)

マリオボロ通りは車やバスが通る道は狭く、その両側に建物がずらっと立ち並んでいるメインストリートです。
観光客はもちろん、地元の人も多く訪れる場所なので平日でも賑わっていて、トゥクトゥクや馬車、路上売りや記念写真サービスなどもあります。
Plaza Malioboro

こちらはマリオボロ通りにあるショッピングモール。地下から地上3階(インドネシアはフロアの記載が独特で、UGやLGなどよく分からない、、)ぐらいまでで、広さもこじんまりしています。
そういえば、モール内に「チクロ」というテイクアウトのお店があったのですが、看板にも「チクロ」というカタカナ表記とともに「The World #1 Japanese Long Chicken Roll」と書かれていました。
日本のお店ではなさそうで、おそらく「日本風の」という意味みたいですが、インドネシアではいくつか店舗を持っていて人気のお店みたいです。
Bangsal Kepatihan(西門)

ショッピングモールを南に進むと、ケパティハンという州知事事務所エリアの西門の前を通ります。
この門の奥にはジャワ式の建築様式(ジョグロ:Joglo)で造られた行政機関の建物が建ち並んでいるのですが、門の前ではよく正装した人たちが記念撮影を行ったり、ちょっとしたセレモニーに出くわすことが多くありました。
ケパティハンは行政機関という重要な建物ではあり社会的地位や職業の象徴とされていますが、ジャワの哲学的思想に基づく人間のライフサイクルでこれらは一種の誘惑と位置付けられており、生命を終えた後に神の元に魂が帰還するまでの旅路を妨げるものとされています。
最終の目的地であるクラトンに向かうまでの道のりが人間の成熟から生命の終わりまでの旅路を表しており、マリオボロ通りの喧騒はそのまま人間を誘惑に誘う場所になっているわけです。
Pasar Tradisional Beringharjo(ブリンハルジョ市場)

さらに南に進むと、左手にあるのがブリンハルジョ市場の入口です。
先ほどのケパティハンもそうですが、こちらのブリンハルジョ市場も世界遺産の構成遺産として登録されています。
通りを歩いると、ずらっと建物が並んでいるので奥行きがどのくらいかあまり意識しないですし、小さい店も多いのでこの市場もそれほど大きくないのかと思いきや、奥にずっと進むといったん道路を挟んでさらに奥まで続いているのでかなり大きな市場です。

中に入ってみると衣料系のお店が多く、エレベーターで2階に上がるとイスラム教の国ということもあって宗教上の衣類のお店もありました。ATMも設置されています。
筆者は旅で訪れた国の伝統的な衣装や服を買うことにしているので、ここでジャワのシャツを購入してみました。
他のお店と比べずに買ったのですが、値段は650,000IDRほど。日本円で6,000円程度でしょうか。それなりのお値段しました。しかも現金のみ。
先ほどのケパティハンと同じように、こちらのブリンハルジョ市場もジャワの哲学的思想では、成熟した人間が打ち勝たなければならない物的な誘惑として位置付けられています。
成熟して最終的には神のもとに魂が帰還するという名誉ある旅路において、このような誘惑は脱ぎ捨てなければならないということです。
ストリートライブが日常のジョグジャカルタ

マリオボロ通りを歩いていると、路上ライブのパフォーマンスをいくつか見かけます。
日本だと路上ライブはギター一本で弾き語りのイメージがありますが、ジョグジャカルタの路上ライブはバンドのように数人で、しかも機材も持ち込んでマイクで唄うというしっかりしたパフォーマンス。
先ほどご紹介した、トゥグがある交差点の世界遺産の模型の前でもライブパフォーマンスがされていました。
この場所以外でも、大きな道路の交差点沿いではギターで弾き語りを行っている人もよく見かけるので、路上パフォーマンスはジョグジャカルタの日常になってます。
Margo Mulya通り

ブリンハルジョ市場を南に進むと、マリオボロ通りの南の終点はもうすぐ。
通りはずっと続いていますが、地図上は通りの名前がMargo Mulya通りに変わっており、ここの交差点は記念写真を撮る多くの人たちでいつも賑わっています。
インドネシアは第二次世界大戦後に独立を果たすまではオランダの植民地だったこともあって、この交差点からみる景観にもその名残が残されているのが分かるでしょうか。
写真に写っている白い壁の建物、右側の建物が銀行、通りを挟んで左側にあるのが郵便局です。
マリオボロ通りはたくさんの建物が連なっているので、それが終わって真っ白なヨーロッパ風の建物がぱっと目の前に現れると、今いる場所がアジアの街であることに混乱するぐらいのインパクトがあります。
Pangurakan Gate

Margo Mulya通りを南に進むと、短いですが地図上はPangurakan通りという別の名前に変わります。
この通りには写真のような門が設置されているのですが、これもジャワの哲学思想を反映したものなんです。
Pangurakan Gateはそのすぐ南のアルンアルン広場の先にあるクラトン(王宮)に入る北門としての位置づけ。
合わせて、北からこの門をくぐることは、トゥグに始まるジャワの哲学的思想(人のライフサイクル)においては、生命が終わって自分の身体をはじめとするすべての物的なものを脱ぎ捨てることを意味します。
物的なものをすべて取り払って魂だけになった後は、最終的な目的地、つまり天国であるクラトン(王宮)に向かって進み、そこですべての始まりである神との”再会”(魂の帰還)を果たすとされています。
何の変哲もない門で、何となくここからマリオボロ通り(街の中心)が始まるのか、という感じで足を踏み入れていましたが、背景にあるジャワの哲学的思想を知ると少し身が引き締まる思いがしました。
アルンアルン広場(北)(Alun Alun Utara)

Pangurakan Gateを南に出るとすぐ先にはだだっ広い広場があり、さらにその先にクラトン(王宮)が見えてきます。
ここがアルンアルン広場(北)で、先ほどご紹介したアルンアルン広場(南)とはクラトンを挟んで対になっており、中央に二本の樹が植えられているのも同じです。
ただ、こちらのアルンアルン広場は門が閉ざされていて中に入ることはできません。
先ほどのPangurakan Gateでご紹介した通り、ここから先はジャワの哲学的思想では魂だけの旅路として設計されているため、現世の私たちが足を踏み入れる場ではない、ということなのでしょう。
アルンアルン広場を取り囲むようにぐるっと道路が敷かれていますが、西側(北から向かって右側)を歩いていくとカウマン大モスクがあります。
イスラム教のインドネシアでは、ジョグジャカルタの街もイスラム教と密接につながりがあります。
一説ではアルンアルン広場(北)の東西には合計64本のガジュマルの木が植えられているそうで、この本数は預言者ムハンマドが64歳まで生きたという考えを象徴しているのだそうです。
いかがでしたでしょうか。
ジョグジャカルタの街はただ歩くだけでもたくさん日本と違うところがあり、それだけでも刺激的ではあるのですが、世界遺産にも登録されたこの街に組み込まれたジャワの哲学的な思想に思いを馳せながら歩いてみると、さらに一味違った風景や感じ方に出会えると思います。
今回はご紹介していませんが、世界遺産に含まれているクラトン(王宮)やタマンサリについても別記事で詳しくご紹介する予定ですので、楽しみにしていてください!
クラトンエリア内には静かな住宅エリアもありますが、道が非常に入り組んでいて、住宅エリアを歩いて地元の人たちの生活を垣間見ることができたのも印象に残っています。
路上で子どもたちが遊んでいる姿、気さくに声をかけてくれたり、道に迷ったら親切に教えてくれる住民など、出会った風景はどこか懐かしい感じがしました。
(参考:「THE COSMOLOGICAL AXIS OF YOGYAKARTA AND ITS HISTORIC LANDMARKS Nomination Dossier」、「Yogyakarta’s Philosophical Axis: A Dynamic Interplay Among UNESCO’s Selection Criteria」 Muwalliha Syahdani、https://visitingjogja.jogjaprov.go.id/en/)
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①クラトン(王宮)南エリア
・Panggung Krapyak Monument(パングン・クラピャック)
・Southern Cosmological Axis(南側の世界観を表す軸線)
②クラトン(王宮)エリア
・Outer Walls, Gates and Fortifications(外側の城壁、門及び砦)
・Inner Complex of the Palace and Its Square(王宮内部)
・Tamansari Royal Garden Complex(タマン・サリ)
・Great Mosque Complex(カウマン大モスク)
③クラトン(王宮)北エリア
・Northen Cosmological Cosmological Axis(北側の世界観を表す軸線)
・Beringharjo Market(ブリンハルジョ市場)
・Kepatihan Complex(ケパティハン複合施設)
・Tugu Monument(トゥグ)