京都が世界に誇る世界遺産の中でも、事前申し込みでしか参拝ができない西芳寺(通称:苔寺)。今回はせっかくの参拝を最大限に楽しむため、予約方法、参拝の所要時間から、苔寺の庭を楽しむための見どころまで、詳しい参拝ガイドをご紹介します!
①世界遺産「西芳寺」とは?
通称「苔寺」として広く知られている西芳寺。
実際に西芳寺を訪れる前に、まずは西芳寺がどんなお寺なのかを知っておくと、より訪れた時の感動と楽しみが広がります。
こちらの記事を読んでいない方は、ぜひご一読ください!
②参拝前に知っておきたいことー申し込み・アクセス・所要時間
オンラインまたは往復はがきでの事前申し込み方法
参拝するためには、事前にオンラインもしくは往復はがきによる申し込みが必要です。
いずれの場合も参拝料金は変わらず、4,000円以上となっており、オンライン申し込みは申込時に、往復はがきでの申し込みの場合は参拝時に支払います。
また、どちらの申し込みでも1回あたりの申し込みは2名までとなっています。
禅寺で静かに参拝を楽しんで頂くことが目的のため、大人数での申し込みは受け付けていませんが、例えば3人で申し込みをしたい場合はオンライン申し込みによる方法でアカウントを2つに分け、同じ日時で申し込む必要があります。
オンラインでの申し込み

オンラインで申し込むためには事前にアカウント登録が必要です。
申し込みの流れとしては、こちらのページからカレンダーを確認し、参拝枠が残っている日の時間帯を選びます。
「申し込み」ボタンをクリックするとアカウントのログインが求められますので、登録がまだの方は新規登録をしたのち、画面に従って申し込みを完了してください。
完了後に上図のような申し込み完了メールが届き、その中にQRコードのリンクがありますので、参拝当日はこちらのQRコードを提示できるようにしておきましょう。
また、身分証明書の提示を求められる可能性がある、との記載もあるのでそちらも念のため準備をお忘れなく。
往復はがきでの申し込み

こちらのページを参考にして、参拝人数と参拝希望日(第三希望日まで)を往復はがきに記入の上、送付すると1~2週間ほどで参拝日を記した返信はがきが送られてきます。
参拝時間はこちらから指定することはできません。
ちなみに、参拝申し込みは参拝日の2か月前から受付開始となっています。
特に梅雨の時期と紅葉の時期は申し込みが殺到するため、2か月前に申し込みを行っても第1希望日に行けるとは限りません。
ですので、必ず参拝希望日は複数予定しておきましょう。
なお、参拝の時間帯は9:30/10:00/10:30/11:00の4つとなっています。
参拝する際にはこのはがきが必要ですので、必ず忘れないように持参しましょう。
また、参拝料は4,000円以上となっていますので、そちらも忘れずに用意しておきます。
このほかには特に持参する必要があるものはありません。
アクセス(バス・電車)
バスでのアクセス
西芳寺に一番近い場所までアクセスできるのが、バスでのアクセスになります。
京都駅もしくは嵐山方面から京都バスに乗り、「苔寺・すずむし寺」で下車。そこから徒歩5分ほどです。
「苔寺・すずむし寺」まで京都駅からは83系統のバスで約60分、嵐山方面からは63もしくは73系統のバスで約15分ほど。
特に京都駅周辺は交通量が多く、予定時間よりも大幅に時間がかかる可能性があるため、余裕をもってバスを利用するようにしましょう。
電車でのアクセス
電車でのアクセスの場合、阪急電車の桂で嵐山線に乗り換え、そこから1駅の上桂駅が最寄り駅となります。
上桂駅からは歩いて15分ほどでしょうか。少し距離があり、駅の周辺にもそれほど案内板は出ていないので、Google Mapがあると心強いでしょう。
苔寺は山の麓にあり、近くには風情のあるお寺もあるので、散策がてら歩いていくのも楽しいと思います。
所要時間の目安(約1時間)
苔寺の参拝時間ですが、公式ホームページでは目安として約1時間と記載されています。
参拝の流れはこの後ご説明しますが、基本的に苔寺の庭園は写経を終えた参拝客から順次自由に参拝する流れです。
ですので、庭園をじっくり楽しみたい方とサクッと回りたい方、楽しみ方で時間も人それぞれ。
ただ、それほど広い庭園ではないため、写経15分~20分、庭園を40分~45分で回って1時間になるので、1時間で全然物足りない、ということは無いように思います(あくまで筆者個人の感覚)。
③参拝の流れー受付から写経、庭園散策まで

受付
西芳寺に到着すると、まず門の前に係員のスタッフが立っているので、参拝証を提示して中に入りましょう。
参拝のおおまかな流れとしては、
受付(参拝料支払い)→本堂で写経→庭園見学
です。
※以前は受付後に住職からの説明・般若心経の唱和、木札への祈願記入がありましたが、現在は行われておらず、延命十句観音経を含む写経のみとなっています。
写真は本堂ですが、こちらの横にある受付でQRコードまたは参拝証を提出し、参拝料を支払って中の本堂に上がります。
受付では朱印帳の受付もありますので、本堂に上がる前に申し込んでおくと良いでしょう。
そのほかお守りなども販売しています。
本堂(西来堂)での写経
受付から本堂に上がりますが、ここから先の写真撮影等は禁止。
ちなみに、本堂は正式には西来堂と呼びます。
本堂に上がると、廊下と中のそれぞれに机が用意されていますので、空いている席に座ります。
正座や畳での直座りが難しい方向けに、廊下にテーブル席も用意されていました。
以前はあった住職のお話によると、座席数は104つほどだとか。これは本堂の襖の面数と同じなんだそうです。
机には写経に必要な紙とお手本、筆など一式が用意されているので、神経を集中して穏やかな気持ちで写経しましょう。
ちなみに本堂は昭和時代、1969年に建てられたもので、西方寺の中では比較的新しいものになります。
庭園を自由散策

本堂での説明が終わると、庭園案内へ。
庭園は最初に案内係の方から簡単な説明があり、その後は自由見学、そして解散となります。
特に時間制限などはないため、せっかくの参拝でじっくりと庭園を見て歩きたい方はなるべく後から進んだ方が良いと思います。
庭園内の散策ルートは基本的には1本道の一方通行となっており、それほど小道も広いわけではないため、後ろにお客さんが大勢いるとなかなかゆっくり自分のペースで楽しむのが難しいからです。
ちなみに筆者が参加したのは梅雨時の平日(月曜日)でしたが、この日でも60~70人ほどの参拝客がありました。
土日や祝日ともなると、ほぼ満員になるのではないでしょうか。
④苔寺と呼ばれる理由ー200種の苔が息づく庭園

西芳寺が別名「苔寺」と呼ばれる理由は、その力強い緑の庭園を見れば一目瞭然です。
ここまで生き生きとした生命力を感じる庭園は他には見たことがありません。
庭園の説明をしてくださったスタッフの方によると、庭園には約200種類もの苔が生息しているそうです。
西芳寺がこのように苔に覆われているのは、気候の他、この周辺の土壌が苔の生育に適しているからなんだとか。
庭園を見学する際はぜひ地面も細かく見てください。いろいろな形の苔がびっしりと地面を覆いつくしていることが分かるかと思います。
⑤ 庭園を彩る見どころー金閣寺・銀閣寺の原型になったデザイン
皆さんは、同じ京都の世界遺産である金閣寺、銀閣寺がこの苔寺をモデルに造られたことはご存じでしょうか。
金閣寺、銀閣寺にも共通するポイントを交えながら、世界遺産・西芳寺(苔寺)の見どころをご紹介しましょう。
夜泊石(よどまりいし)

庭園見学は観音堂からスタートします。
観音堂の横から北に小さな池がありますが、その池の中央に南北二列に連なる石が置かれています。
この石は、港に停泊する船の姿に因んで名づけられました。
実はこの石は、南北朝時代に庭園の作者である夢窓疎石が庭園内に建立したと言われている瑠璃殿と西来堂(本堂)を結ぶ回廊の礎石ではないかと言われていますが、定かではありません。
世界遺産・金閣寺の金閣にも夜泊石(よどまりいし)がありますので、ぜひ比較して観てみると新しい気づきがあるかもしれません。
影向石(藤原親秀の夢の伝説)

観音堂から南へと歩き、湘南亭に向かう途中にひっそりと庭の中に置かれているのがこちらのしめ縄で飾られた影向石。
この影向石には次のような伝説が残されています。
その昔、この西芳寺を夢窓疎石と共に再興した藤原親秀(ふじわら ちかひで)がある晩眠りについていると、夢の中で松尾明神(まつおみょうじん)がこの石に座り、次のようなことをお話になりました。
「我ここに垂迹(すいじゃく)したが、ここに社殿を営むなかれ。」
※垂迹:仏や菩薩が人々を救うため、仮の姿(神様)となって現れること
その次の日、藤原親秀がこの石を見てみると、不思議なことにしめ縄が掛けられていたそうです。
それ以来、西芳寺では毎年正月の時に、この石のしめ縄だけを取り換えているそうです。
湘南亭(千利休・岩倉具視ゆかりの茶室)

庭園の南側にあるのが、こちらの湘南亭。
現存の西芳寺の庭園の中では最も古く、桃山時代に創建されたものです。
ちなみに西芳寺の庭園には3つの茶室があり、この湘南亭は最古であるとともに国の重要文化財に指定されています。
残りの2つは、大正時代に建てられた少庵堂と昭和時代に建てられた潭北亭です。
この湘南亭の特徴は、L字型に母屋が造られていること。
そして、北側に張り出した月見台が設けられています。
実は北側に月見台を設けるのは一般的ではありません。ですが、湘南亭の月見台が北側に設けられているのは、北側の池の水面に写った月を楽しむためです。
こんな美しい庭園で、水面に写った月を静かに楽しむ-。今では到底できない贅沢ですね。
ちなみにこの湘南亭には、かの千利休が豊臣秀吉に命じられて切腹する前に一時期訪れていたり、岩倉具視が幕府の難から逃れるためにここに身を隠していたと言われています。
世界遺産・銀閣寺には、向月台(こうげつだい)と呼ばれる、白砂を円錐台形(えんすいだいけい)に盛ったものがあり、”この上に坐って東山に昇る月を待ったものだとかの俗説(銀閣寺ホームページより)”があるのだとか。
銀閣寺の向月台は、創建当時の室町時代には無く、その後の時代に設けられたものと考えられていますが、苔寺の月見台が銀閣寺の向月台の元と考えてみるのも面白いです。
美しい黄金池の眺めと三尊石組(金閣寺・銀閣寺のモデル)

湘南亭を後にし、ここから潭北亭へと向かう道が、黄金池とそこに浮かぶ2つの島を楽しめる観賞ポイントになっています。
3つの島の一番南側の島、長島の護岸に置かれた3つの石(写真の赤枠部分)は三尊石と呼ばれています。
この三尊石は、西芳寺をモデルにして造られたと言われている金閣寺の葦原島、そして銀閣寺の白鶴島とそれぞれの庭園の中心となる池の石組みの元になっていると言われています。
潭北亭

黄金池の東側にあるのが、こちらの潭北亭です。
名前は夢窓疎石がもともと付けたものですが、先ほどご紹介した通りこちらは昭和時代に建てられたものなのでそれほど歴史的な価値はありません。
こぢんまりとした可愛らしい茶室で、三角の屋根に四角と丸形の窓が面白い造りになっています。
向上関から枯山水へ(浄土から厭離穢土への転換)

この向上関から上段の枯山水の庭園へと入ります。
この関を抜けた後は、意外と高低差のある石組みの階段が続いていきます。
浄土思想によって造られた下段の庭園と、厭離穢土思想から造られた上段の枯山水の庭園。
その2つの思想観が示すように、ここから先の庭園の景観はがらりと姿を変えます。
それまでの豊かな水とどこか浄土の世界を思わせる緑の世界から、ごつごつした石とやや粗削りの地面や石組みがむき出しになった質素な世界。
その対比をぜひ楽しんでください。
須弥山石組

向上関から指東庵に向かう途中にある、最初の枯山水がこちらの須弥山石組です。
上段の枯山水庭園は、さらに上段と下段の枯山水に分かれており、須弥山石組は下段の枯山水になります。
須弥山石組は手前に大小8個の石を近接して配置し、後ろに大小10個の石をやや間隔を開けて配置しているのが特徴です。
通常の枯山水において、石は縦に配置されるのが一般的ですが、西芳寺のこちらの枯山水は横に配置されており、とても珍しい形式になっています。
指東庵

階段を上がって行くと、指東庵に辿りつきます。
この指東庵は枯山水庭園を前庭とする東向き、宝形造の建物になっていて、西側に国師坐像を安置する祀堂があります。
隠山石組と鯉魚石

指東庵の東側にあるのが、こちらの洪隠山石組の枯山水です。
何とも大きくて鋭利な石がたくさん配置されていますよね。
この枯山水は作庭当時の姿のまま残されていると言われていて、上段・中段・下段の3段組みの構成になっています。
三段組となっていますが、それぞれがバラバラではなく全体としてもどこか統一感が感じられるのは、それぞれの石と段が三角に造られていて、全体としても大きな三角形のような形になっているからです。
この枯山水は別名「枯滝石組」と呼ばれていて、まさに雄大な滝が流れ落ちる様を表したものだそうです。
枯山水をじっと眺めていると、滝を流れ落ちる雄大な水流の音が聞こえてくるようです。

この枯滝石組の中段と下段の間には、鯉の形をした石、鯉魚石(りぎょせき)があります。
これは鯉の滝登りを表したものと言われており、まさに荒々しい滝を表現したものです。
金閣寺にも鯉魚石(りぎょせき)がありますが、苔寺のそれは枯山水、金閣寺は龍門の滝という本物の滝で表現したところに違いがあります。
龍淵水と座禅石

指東庵を右に進むと、そこに湧水が出ている一画があります。
これは龍淵水と呼ばれており、その湧水を取り囲んでいる石組みの内、右側の石組みを座禅石と呼んでいます。
座禅石は、夢窓疎石が実際にこの石に座って作庭の指揮を取ったとも言われており、龍淵水は修行者が身を清めるためにこの湧水を利用していたと言われています。
この石組みも、金閣寺の「銀河泉」、銀閣寺の「相君泉」のモデルになったと言われています。
⑥西芳寺の庭園の美しい景観を表す西芳寺十境

最後に、西芳寺の庭園の美しい景観を表す「西芳寺十境」をご紹介します。
西芳寺十境に挙げられているのは、
衆妙門、幽谷荘、七折坂、希声澗、大歇橋、障日峰、叫猿峡、洪隠山、逝多林、退耕?
の10個ですが、現存するのは衆妙門、大歇橋、洪隠山の3つのみです。
こちらにもぜひ注目してみてください!
いかがでしたでしょうか。
西芳寺でしか味わえない面白い見どころがたくさんあることを知っていただけたかと思います。
もちろん緑の苔に覆われたその美しい庭園だけでも一度は観る価値がある西芳寺。
ぜひ参拝に訪れてみてください!
(参考」:「京の古寺から 6 西芳寺」藤田 秀岳/大通 浩一 淡交社、「古寺巡礼 36 西芳寺」藤田 秀岳 淡交社)







お客さんが本堂に上がると、住職の方から簡単に西芳寺と本堂についてご説明があり、その後に皆で般若心経を唱和します。
その後に用意された木札に願いを筆で書き、それを提出して庭園の見学に移ります。
机には写経用の紙も用意されていましたが、落ち着いて写経をする時間はありませんでした。。