2012年10月に改修工事を終えて新しく生まれ変わった東京駅。今年は100周年SUICAの販売予約を受け付けたところ、当初の予想を大幅に上回る予約があったことでも話題になりました(最終予約枚数はなんと499万枚!)。
日本一鉄道の線が乗り入れている駅として、まさに日本を代表する東京駅。それにふさわしく丸の内駅舎はとても美しいレンガ造りの建物になっています。
他の駅とは全く異なる外観となった東京駅ですが、皆さんはなぜ東京駅の建物がこのように豪華に造られたのか、ご存じでしょうか。「日本の中心となる駅だから?」と思われている方、それだけではありません。
今回は東京駅の魅力と見所についてご紹介したいと思います。
東京駅の建築マメ知識①東京駅は日本で最初の駅ではない!
東京駅はあれだけ立派な駅舎で歴史を感じさせることや、多くの線の乗り入れ駅であることから日本で一番古い駅と思われがちです。しかし、最初に日本で鉄道が開通したのは、今の新橋駅と桜木町駅を結ぶ線でした。1872年のことです。一方で東京駅が完成したのは1914年。実に最初の鉄道開通から40年以上も経ってからでした。
当時国鉄ですでに新橋から神戸までが開通しており、私鉄の日本鉄道が上野―青森間を開通する計画があったことから、上野と新橋を結ぶ線の駅として東京駅が生まれたのです。
東京駅の建築マメ知識②東京駅の設計
東京駅を設計したのは辰野金吾氏です。東京駅の建築スタイルがどのように分類されるかにはいろいろな説があり、明確ではありません。ルネッサンス様式やバロック様式などと言われています。特徴としては、南北にドーム型の天井を持つ構造になっていることや、南北のドームはほぼ同じ造りになっていること(つまり、シンメトリー(=左右対称)の造り)が挙げられます。西洋の建築文化を取り入れつつ、そこに日本の技術を取り込んだ建築になっています。
(出典:http://dacapo.magazineworld.jp/column/81898/, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%A7%85#.E5.86.8D.E9.96.8B.E7.99.BA.E4.BA.8B.E6.A5.AD)
ちなみに、アムステルダム駅は東京駅とよく似たデザインになっていますが、建築様式としては異なるようです。
東京駅の建築マメ知識③東京駅の位置づけ
東京駅をこのように豪華な造りにしたのにはいくつかの理由があります。
1.日本の起点
東京駅は新幹線の起点になっているように、建設当初から東京駅を日本の起点として、鉄道網を発達させる計画があったと言われています。
2.天皇の駅
東京駅は線路を挟んで丸の内と八重洲口に分かれています。丸の内の駅舎をこのように立派にしたのは、その先に皇居があるためです。そのため、駅舎にも天皇専用の出入り口である貴賓口が設けられています。
3.世界への発信
東京駅の建設が本格化したのは、日清、日露戦争が終わった1908年からでした。両戦争に勝利した日本は、その後世界へ日本の存在感や技術の進歩などをアピールすることも含めて東京駅を建設したと考えられます。
東京駅構内の見どころ
ドーム天井
(出典:http://ganref.jp/m/pure-heart/portfolios/photo_detail/ecbb624cb29a27d5739769b267d8510c)
南北にあるドーム型の天井(丸の内北口と南口)は八角形の形をしています。写真のように、八角形の各点に羽を広げた鳥が描かれています。これ、何の鳥か分かりますか?
(出典:http://blog.goo.ne.jp/mashi8rosama/e/7f6067d6511b8a766fe7b039e0794acf)
この鳥は「鷹」なんです。しかもよーく見ると、足元に稲穂をつかんでいます。これは、日本の稲作が稲穂を持った鷹によって始まったという伝説にちなんでいます。東京駅が日本の起点、つまり日本の始まりということと重なりますよね。
さらに、描かれている鳥の下に目をやると、緑の丸い円形の飾りが見えますよね。その中央には白い何かが描かれています。これ、描かれているのは干支なんです。
(出典:http://yasuhiko46b.at.webry.info/201501/article_1.html)
「ん?ちょっと待って。干支って十二の動物だけど、この天井は八角形。数が合わないんじゃ・・・」と思われた方、鋭いです。ここに描かれている干支はその通り、八つの干支のみが描かれています。この八つというのはそれぞれある方角を示していて、東、南、西、北の方角を示す干支が除かれています。何の干支か、皆さん実際に見て確かめてみてください。
(出典:http://kousyakuhujin.blog11.fc2.com/blog-entry-1018.html)
干支と干支の間にある白い半円のアーチのてっぺんには、豊臣秀吉の兜をモチーフにした模様がつけられています。
最後に、三階のテラスの下の付け根部分には月の満ち欠けを示すデザインが施されています。こちらはご自分の目で確認してみてください。
関東の駅100選
(出典:http://blog.goo.ne.jp/zouketsusagyoutyuu/m/201301/1)
東京駅はそのレンガ造りのルネッサンス様式建築から、関東の駅100選に選ばれています。
郵便ポスト
(出典:http://rosaroom.exblog.jp/16968346/)
丸の内口付近(改札内)にある郵便ポスト。東京駅の飾りがついています。普段はあまり気にとめないものなので、素通りして気づかない人も多いのではないでしょうか。
事件のプレート
設立後100年を迎えた東京駅は、その中でもいろいろな歴史がありました。その一つとして、東京駅構内での事件があります。
(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E6%95%AC%E6%9A%97%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6)
一つ目が、原敬首相が暗殺された現場です。丸の内南口付近の暗殺現場の壁には、そのプレートと付近の床に現場を示すマークがつけられています。原首相はその政策方針に反対する鉄道省山手線大塚駅職員の中岡艮一によって短刀で胸を刺されて死亡しました。1921年の出来事なので、駅が完成してから10年も経っていない間の事件でした。
二つ目が濱口雄幸首相の襲撃現場です。
(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%B1%E5%8F%A3%E9%9B%84%E5%B9%B8)
濱口首相も1930年、その政策に反対する愛国社社員の佐郷屋留雄に銃で撃たれました。しかしその後の大手術で一命をとりとめています。
蒸気機関車の車輪
(出典:http://blogs.yahoo.co.jp/atakek5_7_20d/12965336.html)
東京駅地下の丸の内口からKITTE方面に向かうコンコースに、蒸気機関車C62、15号機の車輪が展示されています。第二次世界大戦後の日本において、鉄道は貨物輸送から旅客輸送へとその役割を変えていきました。C62は旅客機関車として戦後の日本を支えた存在です。
東海道線、山陽線をメインに、その後は函館や東北などで運行されていました。日本各地を走って日本の大動脈となったC62を記念して東京駅に展示されています。
いかがでしたでしょうか。日本で最も重要な駅である東京駅は、その歴史、外観、デザインなどあらゆる面で日本一にふさわしいいろいろな見どころがあります。普段は移動の際に何気なく通っている駅かもしれませんが、一度じっくりとその見どころを味わってみてはいかがでしょうか。