世界遺産にもなっている京都の龍安寺。
皆さんも一度は写真で観たことのある枯山水の石庭がとても有名です。
砂の庭に一見無造作に置かれた15個の石。それはいったい何を意味しているのでしょうか??
今回は、石だけでなく、石庭のもつ秘密についてもご紹介します。これを読めばあなたもきっと龍安寺に行きたくなる!
龍安寺って?龍安寺の枯山水ってなに?
(出典:http://corocat.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_a3cd.html)
枯山水というのは、普通の庭園では必ず使うはずの「水」を用いずに、それを砂を使って表現した庭園のスタイルをいいます。
日本庭園の4要素
日本庭園は、「水」「石」「植栽」「景物」の4つの要素から造られています。
水 : 池や庭園内を流れる川など
石 : 池などに浮かべる石。石を使って、庭園を造る背景にある世界観や思想を表す
植栽 : 松や梅といった、庭園内に植える樹木
景物 : 庭に置く敷石や飛石、石灯籠など、庭の風情にアクセントを加えたり、灯りや歩きやすくするなどの目的で置かれる
龍安寺の石庭
京都の龍安寺の石庭は、このうち「水」と「植栽」を使っていません。
枯山水は「水」を使わない代わりに、水や水の流れを砂で表現しますが、龍安寺の石庭は植栽も用いられていません(石の根元に苔が生えているのみ)。
枯山水は、それまで「水」がある場所にしか造れないとされていた庭園の限界を外して、どこでも庭園を造ることを可能にした点において画期的な庭園でした。
枯山水の庭園が造られたのは、室町時代後期以降と考えられています。
戦国時代という戦乱の時代において、それまでの優雅な庭園を造るだけの財力や権力、そして時代の風潮が薄れたのが枯山水の出現につながったのかもしれません。
龍安寺の枯山水に関するミステリー①龍安寺について
龍安寺は臨済宗の寺院で、1450年に細川勝元によって創建されました。
その後、応仁の乱で一度焼失してしますが、その後勝元の子の細川政元らによって再度創建されました。
龍安寺の枯山水に関するミステリー②石庭について
いつ、だれが、どのような目的で造ったのかは明らかになっていない
龍安寺については前述の通り、創建された時がはっきりとわかっています。
しかし、石庭についてはいつ、だれが、何のために造ったのか明らかになっていません。これが石庭の表すもののミステリーにもつながっています。
石の数と配置について
(出典:http://www.iup213.com/archives/8082)
龍安寺の石庭には15個の形、大きさの異なる石が置かれているだけのシンプルな庭になっています。
だからこそ、逆にその石を用いて何を表現しようとしたかについては実に多くの説が出ています。その数は50以上にもなります。
まずは簡単に石庭の造りをご紹介します。
(出典:http://blog.goo.ne.jp/kappou-fujiwara/e/8a2df119e22db1a0e81f90eadd60483b)
この写真を見ると、15個の石が大きく5つのグループに分かれていることが分かります。左から5つ、2つ、3つ、2つ、3つのグループです。
このうち一番左の5つのグループと、一番右手前の3つのグループはそれぞれ真ん中に大きな石が配置されていることから、反対から見るとそれぞれ奥の石が大きな石に隠れて見えなくなってしまいます。
龍安寺の枯山水に関するミステリー③石の数と配置のミステリー
石庭の石が何を表現するか、その説は50以上にもなるとお話ししましたが、今回は特に有名な諸説を5つご紹介します。
①知恵の板説
皆さん、知恵の板はご存知でしょうか。
知恵の輪と同じように、正方形や長方形を細かく直角三角形などの図形に分解して、それをいろいろ組み合わせて違う図形を創る、というものです。
知恵の板はかなり昔から存在していて、日本では「清少納言の知恵の板」というのが存在していました。
(出典:http://ameblo.jp/masanori432/entry-10042737587.html)
この清少納言の知恵の板は、それぞれのパーツを並べ替えると、中が正方形の空洞になっている「釘貫」という形を作ることができます。
このように、知恵の板は昔から存在しており、龍安寺の石庭はこの知恵の板を表したものではないかという説です。
この写真のように、石の配置を考慮して線を引くと、直角三角形が3つできます。石はこの知恵の板を想像させるために置いたのではないか、という説です。
②七・五・三説
先ほどご紹介した通り、石庭の石は5,2,3,2,3の5つのグループに分かれています。
左から2つのグループを合わせると7つ、次の2つのグループを合わせると5つ、そして残りの3つで「七・五・三」を表しているのではないかと言われています。
「七・五・三」というのは昔から縁起の良い数字と言われています。
現在でも七五三の伝統が残っていますよね。
奇数は陰陽道では「陽」の数と言われており、七・五・三は五つの奇数の中の真ん中なので、さらに縁起が良いと言われています。
この説だと、5つのグループに分けた意味が説明できないため、あまり有力ではないのかもしれません。
③「心」の字説
石庭に並べられた石を5つのグループでみると、漢字の「心」という字が浮かび上がってきます。
なぜ「心」なのかは定かではありません。
しかし禅宗の寺院であることを考えると座禅修行をしながら心を磨く、という意味で心というのは関係しているのかもしれません。
④「虎の子渡し」説
虎の子渡し、というのはなぞなぞでも出てくることがあります。
母親虎と三匹の子どもが川を渡ろとしています。
・三匹の子どものうち、一匹は虎ではなく豹でした。
・豹は母親がいない間に子どもの虎を食べてしまいます。
・母虎は一度に一匹の子どもをくわえてしか川を渡ることができません。
子ども虎を豹に食べられないようにするには川を何度渡ればよいでしょうか?
石庭の15個の石は、このとんちの虎が川を渡る姿を描いていると言われています。
ただしそれを石からくみ取るのはかなり困難でしょう。
⑤カシオペア座説
この説は、石庭の15個の石がカシオペア座を模しているのではないかという説です。
なぜカシオペア座なのでしょうか。
それは、古来からカシオペア座は北極星を探す時の目印になっていたためです。
北極星はほとんどその位置を変えず、北の方角に輝いています。このため、昔の人は方角を知るために北極星を探したといわれています。
枯山水の砂は水を表したものというのはすでにお話ししましたが、そうすると庭一面に敷き詰められた砂は海を表しているものとも考えられます。
海の航海において、方角を知ることは何よりも重要であり、カシオペア座が重要な意味をもった星座であるため、それを表したのではないか、と言われています。
龍安寺の枯山水に関するミステリー④石庭のヒミツ
15個の石以外にもこの石庭にはある仕掛けがされています。
遠近法の演出
あまり気にかけないかもしれませんが、石庭を囲む塀にも注目してみてください。
実は東西両側の塀は奥に行くほど背が低くなって、近くになるほど高くなっています。
これは、近くにするほど塀を高くすることで遠近感をより感じられるようにするためと言われています。この遠近感によって、石庭が奥行きをもって感じられるようになるのです。
視点の演出
石の配置でお話ししたように、一番右と左のグループには真ん中に大きな石が配置されているため、それぞれ反対側から見ると、奥の石が大きな石に隠れてみることができません。
一説では、この石庭は室内のどの場所からもすべての石を見ることができない造りになっていると言われています。
一方で、縁側のある部分に立って庭を見渡すと、一部だけしか見えていませんが、15個すべての石を確認することができるという話もあります。
さて、いったいどちらが本当なのか、ぜひ龍安寺に足を運んでみてはいかがでしょうか。
いかがでしたか。
龍安寺の石庭は、見る人によってさまざまな解釈ができる庭になっています。まさにそれが庭の作り手の思いだったのかもしれませんね。
見る人がそれぞれの世界観や思いで庭を楽しむ-。
そんな楽しみがこの石庭にはあります。みなさんもぜひ龍安寺の石庭を訪れて、思い思いの解釈を楽しんでくださいね。
(参考)
http://www.ryoanji.jp/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BE%8D%E5%AE%89%E5%AF%BA
http://garden.anavi.jp/