観光と違って、一人旅はその目的も旅に出る理由も、100人に聞けば100通りの答えが返ってくるものです。
ですが、いろいろな人の一人旅への思いを聞くことで、一人旅の意義について見えてくるものもあります。
今回は4つのストーリーから、一人旅をすることについて考えてみましょう。
1.株式会社ワタミ創業者: 渡邉 美樹 氏
(出典:http://bb-relife.jp/interview/service-food/455)
外食産業の中で、売上高1,500億円以上をほこり、「和民」など誰もが知っている居酒屋チェーンを展開している株式会社ワタミの創業者、渡邉美樹氏。
渡邉氏は幼いころに母親を亡くし、また父親の会社が清算に追い込まれるという二つの悲劇を体験しています。それが、「将来は起業して社長になる」という強い意志を持つことにつながったようです。
「起業」という目標をずっと持ち続け大学に進学した渡邉氏は、「何の事業で起業するか」を決めるために一人旅に出ます。
彼の一人旅は日本一周と、北半球一周の旅でした。
ワタミを創業したように、渡邉氏は一人旅を通じて、外食産業で起業することを決断します。それではなぜ、一人旅が彼の決断に結びついたのでしょうか。
北半球を旅行している時に、世界中は差別で溢れているという事に気付いたのです。金持ちと貧乏、肌の色、主義・主張の違い、様々な事で差別をしているんです。「なんだ人間っていうのは嫌な奴ばっかりだな」と、そんな思いを抱きながら旅をしていました。
(引用:http://bb-relife.jp/interview/service-food/455)
渡邉氏が一人旅で学んだこと。それは、「世界は差別であふれている」ということ。今では少し想像するのが難しいかもしれません。しかし、彼が北半球一周の旅に出たのは1982年でした。そのころの世界と今の世界では、見えてくるものは全く違います。インターネットも無い、LCCも無い、ソーシャルサービスも無い。その年代であれば、まだ肌や性別、文化の違いで差別が色濃く残っていたと考えられます。
そんな思いを抱きながら、渡邉氏はアメリカニューヨークのグリニッジ・ビレッジというライブハウスにたどり着きました。
そのライブハウスでは本当に美味しい食事があって、素敵なサービスがあり、良い音楽が流れている。そこでは様々な国の人が宗教・人種の壁を超えて、肩を組み歌い、乾杯をする。1つの、素敵な地球があったんです。そこにいる人達の笑顔に感動して、涙を流しながら、「ああ、こんな場面が提供できれば良いな」と心から思いました。「僕は外食産業の社長になる。一人でも多くの人の思い出に関わって、笑顔を作りたい。」そう日記に綴りました。
(引用:http://bb-relife.jp/interview/service-food/455)
差別に絶望した中で、飲食によって肌や人種に関係なく人が幸せになることを目の当たりにしたことが、渡邉氏が外食産業で起業する決め手になったということですね。
もともと渡邉氏は人と接することが好きだったらしいですが、当時の一人旅はインターネットもソーシャルサービスも無く、今よりももっと孤独な旅だったと思います。「人と話す」「人と接する」ことに飢え、さらに差別を目の当たりにした中で見たニューヨークのライブハウスの光景は、異様なまでに強烈なインパクトを持っていたと思います。
渡邉氏にとって、一人旅は孤独や差別という現実を知るきっかけになったのと同時に、だからこそ食事という普段の何気ない一場面が違う意味をもって映し出されることを体験できたのではないかと思います。
(出典:http://bb-relife.jp/interview/service-food/455
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%82%BF%E3%83%9F
http://ss-foodlabo.com/quotation/quotation_detail?id=111
http://www.nippon-shacho.com/interview/in_watami/)
2.ミュージシャン: ナオト・インティライミさん
(出典:http://matome.naver.jp/odai/2140935022912430401/2140936051519630303)
今では多くの人に支持され、トップアーティストの仲間入りを果たしたナオト・インティライミさん。Mr.Childrenのバックコーラスとしてツアーにも帯同していたことも知られています。
そんなナオト・インティライミさんは2003年8月から約1年半をかけて世界一周の旅に出ています。
彼が旅に出た理由は、「世界の音楽に触れる」ためと「一歩を踏み出すため」と言われています。
実は彼は、大学時代から音楽の才能を見いだされて、世界一周後にナオト・インティライミ名義で活動する前からCDデビューを果たしています。しかし、3枚のシングル、1枚のアルバムをリリースするもその後鳴かず飛ばずで契約打ち切り。
その後自信喪失したナオト・インティライミさんはなんと8か月もの引きこもり生活に入っていたそう。音楽に情熱を注いでいた分、ヒットせずにレーベル会社から契約を打ち切られた時のショックも大きかったのではないでしょうか。
引きこもり生活の間は音楽活動はされていなかったそう。ですが、引きこもり生活はただ無意味に時が過ぎていくだけのものではありません。きっとその間いろいろなことを考え、悩んで、そして心身ともにエネルギーをゆっくり充電していたのではないでしょうか。
そして「このままではいけない、何か一歩を踏み出そう」と決意するわけです。
そこで出した決断が、「世界一周の一人旅に出ること。」
引きこもりから世界一周を決断する、そのある意味ぶっ飛んだ考え方もさることながら、実際に世界一周する行動力もすごいですね。
その後、ニューアルバムのインタビューで彼の言葉を紹介すると、
歌手より旅人が本業みたいなところはありましたよね。でも今もそれぞれが大事な側面なので。
でも8年前に帰ってきてからも、いつでも旅に行きたかったし。ただ、デビューしてからは、時間的にまとめて行ける機会はなかったっていうのはあって。「押しつぶされる」まではなかったけど、「旅に行ったほうが絶対感じる」っていうのは常に思ってて。
(引用:http://music.emtg.jp/special/20130502217b5c015)
この言葉から、ナオト・インティライミさんにとって、旅は一歩を踏み出すきっかけだっただけではなくて、それによって旅が大事な自分の一部になったこと、そして旅が今でも彼に新しい何かを与え続けていることが分かります。
(出典:http://honsukisukicafe.seesaa.net/article/303356459.html
http://music.emtg.jp/special/20130502217b5c015 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%AA%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%9F)
3.芸能人 : 眞鍋かをりさん
(出典:http://matome.naver.jp/odai/2143578437487704001)
元祖ブログ女王、頭脳明晰でインテリ芸能人としてなど幅広く活動されている眞鍋かをりさん。一人旅好きな芸能人としても有名ですね。
そんな彼女は時間が出来て思い立ったらすぐその日にでも一人旅をしに海外に旅立つとか。その思い切りの良さがすごいと思うのですが、彼女が一人旅に出る理由、それは「達成感、サバイバル感覚、非日常、冒険を感じるため」だと言っています。
眞鍋かをりさんが出された旅本「世界をひとりで歩いてみた」の出版記念で、とあるラジオ番組でゲストとして彼女が旅についての思いをいろいろ語っています。
一人旅はサバイバルと一緒。
最初は一人でビクビクでした。海外でチェックインするだけでも、もう”ボンジュール!”とフランス語でいわれた瞬間に”どうしよう!”ってなってたんですけど、それを一個一個クリアして出来るようになっていくのがものすごく楽しい!
ゲーム感覚で、達成感がありますね。ドラクエで新しい街を見つけたときの興奮わかりますか!?街の人全員に話を聞いてみたいし、壺も割ってみたいみたいな(笑)街を出ると新しいモンスターに会いますよね?”こいつは炎の魔法はきかないんだ”みたいに一つ一つ知っていくのが楽しい!
(旅に出ると)非日常なので、そこにいると自分で意識しなくてもちょっと日本が変わって見えてくる。
旅を始めたときは仕事も休んでいて、しんどいと感じることが多かった。日本に普通に”嫌だなー”と感じることってあるんですが、一人旅をしているとたとえ一週間の間でもそんなことを感じる時間て一秒も無いんです。
(引用:https://www.youtube.com/watch?v=pXYlTjWCGTk)
眞鍋かをりさんが一人旅に出る理由、それは「非日常」や「冒険」を味わいたいということなんですね。日常の嫌なことを忘れて、思いきりワクワクすることに没頭するために一人旅に出ているんだと思います。
4.溝口養賢(小説「金閣寺」の主人公)
最後に、前回の記事で金閣寺についてご紹介したので、それにちなんで三島由紀夫の小説「金閣寺」の主人公である溝口についても、実は一人旅をしているのでご紹介したいと思います。
溝口が一人旅をしたきっかけ、それは金閣寺からの出奔でした。出奔とは簡単に言うと、逃げ出すことです。
溝口にとって金閣寺は絶対的な存在で、彼の人生の重要な出来事が起こるたびに、彼の心を支配してきました。そんな溝口は金閣寺で修行僧として暮らしていましたが、金閣寺の住職になることも彼の秘かに抱いていた野望の一つでした。
ところがいろいろなごたごたが起こるにつれて、彼と住職との間の信頼関係は次第に崩壊していきます。そして、ついには住職から「お前を将来私の跡継ぎにするつもりはない」と宣言されます。
そんなこともあって、溝口は金閣寺から出奔して敦賀方面へ一人旅に出る決意をして、大学の友達であった柏木から借金をしてまで一人旅にでます。
そして、溝口は宿泊先の宿舎で初めて「金閣寺を燃やす」という考えを自分の中にはっきりと持つことになる・・・
この小説の中で、溝口にとっての一人旅、それは「今置かれている状況からとにかく逃げたい」という思いから来ています。そして、日常から逃げ出した旅先で自分の思いと向き合うことで「金閣寺を燃やす」という思いに気づくことになります。
つまり、溝口にとって一人旅は「現実から逃げて、自分と向き合う」ためのものだったと思います。
いかがでしょうか。一人旅といっても、出るきっかけや目的はひとそれぞれであることが良く分かりますね。
・世界に出てきっかけをつかむ
・一歩を踏み出す
・非日常の冒険に出る
・自分と向き合う
一人旅に「こうであるべき」ということはありません。あなたが思う、一人旅をぜひ実現してください。