世界遺産の楽しみ方

【ココがすごい!】海外の2016年世界遺産候補地の魅力4選

世界遺産は毎年、各国の政府が推薦する案件をユネスコ世界遺産センターが受理し、審査のうえ登録が決定します。
日本は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を登録推薦し、2016年の世界遺産登録を目指しています。

日本以外にもいろいろな国が2016年の世界遺産登録を目指してそれぞれ魅力的な候補地を推薦いていますが、今回はその中から興味深いものを4つご紹介したいと思います。
(2016年の世界遺産候補については、こちらのウェブページを参照しました。出展:http://goo.gl/TYcx8l

1.ジブラルタルのネアンデルタール人の洞窟群と環境(イギリス)

ジブラルタル

ジブラルタルは、イベリア半島の南に位置する地域。地図をご覧いただくとよくわかりますが、これはスペインがある半島です。ですが、ジブラルタルを含む地域は今もイギリス領として統治されているため、世界遺産の推薦もイギリスとなっています。どうしてこのようになったのかは歴史上の経緯を見なければいけませんが、今回は省略します。

ジブラルタル2出典:http://jptopic.org/%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF/%E3%82%B8%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%AB%
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ジブラルタルにはこのように、なんとも大きな岩山があります。これ、なんと一枚岩とのこと。かなり巨大ですね。
この一枚岩の海の近くにゴーラム洞窟という、その昔ネアンデルタール人が住んでいたといわれている洞窟があります。今回の世界遺産候補はこの洞窟を含むネアンデルタール人に関する洞窟群になります。

ここがスゴイ!

「ネアンデルタール人ていう大昔の人の洞窟がそんなにすごいの??」と思われるかもしれません。そんな方のために、この洞窟の価値を簡単にご紹介したいと思います。

ネアンデルタール人は謎がまだまだたくさん

まず、ネアンデルタール人は、我々の祖先のホモ・サピエンスとは、祖先をともにしているものの、違う人種という位置づけです。つまり、今の我々とは違う動物ということです。外観はほとんど同じだったみたいですが、ネアンデルタール人のほうが少し筋肉質で大きかったといわれています。

そんなネアンデルタール人は、歴史上絶滅しました。ホモ・サピエンスが現代まで生き残り、ネアンデルタール人が絶滅した理由ははっきりとは分かっていません。一説にはネオンデルタール人はホモ・サピエンスが持っていた意思疎通能力(言語能力の前段階の能力みたいなもの)が無かったため滅んでしまったのでは?という説があります。

ジブラルタルの価値

ジオ(出典:http://blogs.yahoo.co.jp/ezomomonga314/34108853.html)

そんななか、ジブラルタルの洞窟から、ネアンデルタール人が壁に描いたと思われる簡単な図形が見つかりました。これ、写真のように単純な格子型の図で○×ゲームのあの線のようなものです。「動物が引っ掻いたんじゃ・・?」と思われるかもしれませんが、研究者が試したところ、数十回削らないとこんな跡にはならないそうです。これがそれまでの定説を覆すことになったんです。

意思疎通能力が無いということは、野生動物と同じで自分の意思を共有するすべがありません。犬や猫が図形を描けないような感じです。それが、その格子型の図が見つかったことで、ネアンデルタール人に意思疎通能力があったということが証明されました。これが人類史の研究上とても大きな意味を持っていたということなんですね。

この洞窟や巨大な一枚岩、きれいな街並みなど、ジブラルタルはいろいろな魅力がまだまだありそうな場所ですね。

2.左江花山のロックアートの文化的景観(中国)

世界遺産の数ではイタリアに次ぐ第二位の中国。2016年の世界遺産登録に向けても二つの場所を推薦しています。その一つがこの左江花山。

この山の岩壁にはチワン族と呼ばれる、その地に遥か昔暮らしていた人たちの生活が鮮やかに描かれています。遠くからみると、木々の緑の間にあるその岩壁の絵画が花に見えることから「花山」という名前がついたそうです。

ここがスゴイ!

岩壁に描かれた絵画

花山花山2
(出典:http://lvyou.baidu.com/zuojianghuashan, http://www.ngzb.com.cn/thread-821991-1-1.html)

この世界遺産のすごいところは、なんといっても岩に描かれた絵画です。その色や描かれている人、どちらも鮮やかに表現されています。このように、岩に描かれた絵画はすべて人を題材としており、1,800点以上にのぼるそうです。この絵画が描かれたのも、なんと2,000年以上も前のこと。写真を見ても人の絵だらけですよね。どこか楽しげな印象のある絵ですが、これは何を表しているのでしょうか?

いろいろな謎に満ち溢れている

この絵画、まず見た目からかなりのインパクトがありますが、そもそも2,000年以上も前に描かれたものが雨や風にさらされてもまだこれだけはっきりと鮮やかに残っている、というのは不思議に思いませんか?

そのほかにも、どうやってこの絵を描いたのか、その目的やテーマなども諸説があるようで断定されていません。

このように今まだ残るたくさんのミステリーもこの場所を魅力的にしてくれています。

3.アニの文化的景観(トルコ)

トルコといえばシルクロードなど、独特の雰囲気が魅力の国です。トルコも中国と同じく、二つの場所を世界遺産に申請しています。アニ遺跡はそのうちの一つです。アニは、トルコとアルメニアの国境に沿って流れるアルパチャイ川の両側に、シルクロードの商業都市として建設された、中世アルメニアの商業都市でした。

もともと10~11世紀ごろにアルメニア人が定住したそうですが、その後トルコの支配下になった際に退去を余儀なくされ、その後廃れていったそうです。

ここがスゴイ!

なんといってもその景観

アニ(出典:http://www.rakudatravels.com/photo/pcl/4150/pcl41_index.html)

アニ遺跡はほとんどが教会の跡です。なんといってもすごいのが、そういった建物の遺跡と周辺の景観の組み合わせではないでしょうか。見渡す限りの荒野の中に、ぽつぽつとこういった建物の遺跡が点在しています。

それはまるでファンタジーや中世の世界に戻ったかのような独特の空間です。長い間の争いの結果廃れてしまった建物と、その周りの何もない平原が醸し出す平和-。争いと平和。まったく逆の雰囲気を醸し出すものが見事に組み合わさった感じがします。

しかしながら、この遺跡は十分な補修、保持がなされていないため、中にまだ残っているフラスコ画なども崩壊の危機にさらされているそうです。広大な草原の中を自由に歩き回ってこのような建物を観てまわり、その世界に思い思いに浸ってみてください。

二つの宗教を示す遺跡

アニ遺跡には教会とモスクの遺跡を見ることができます。教会とはつまりキリスト教の施設。一方でモスクはイスラム教の施設です。今となっては異なる宗教の建物が共存することは何ら珍しいことではありませんが、両者の建物の遺跡を同時に見ることができるのは面白いですよね。

さきほどご紹介したように、この遺跡は十分な補修がなされず、崩壊の危機に瀕しています。なるべく早く訪れたほうが良いことは確かです。

4.ル・コルビュジエの建築作品 - 近代化運動への顕著な貢献

スイスフラン(出典:https://www.mataf.net/ja/currency/converter-CHF)

ル・コルビュジエという人物について、建築に詳しい方以外にはほとんどその名前を聞いたことがないのではないでしょうか。上の写真はスイスの10フラン紙幣なのですが、ル・コルビュジエはこの紙幣に印刷されている人物です。今回世界遺産に推薦されているのは、このル・コルビュジエの設計した建築物が対象となっています。

ここがスゴイ!

ル・コルビュジエは20世紀を代表する近代建築の巨匠

ル・コルビュジエが現在の建築に与えている影響は計り知れません。彼は、「ドミノシステム」と呼ばれる現在の建築の基礎となる構造を提唱しました。「ドミノシステム」とは、鉄筋コンクリートを用いることで柱・スラブ(土台)と階段で建築物を構成する手法です。今では当たり前と思ってしまうかもしれませんが、その当たり前を作ったのがこのル・コルビュジエになります。

サヴォア邸(出典:http://portal.nifty.com/kiji/120824157074_1.htm)

この写真は彼の代表作でもある「サヴォア邸」です。とてもスタイリッシュなデザインですが、いつ建築されたかご存じでしょうか。なんと1929年になります。今から90年近くも前にもなるんですね。外観だけでなく、建物の内部の作りもかなりおしゃれで、90年近くも前に設計されたとはとても思えません。このサヴォア邸も今回の世界遺産の推薦に含まれている建築物の一つです。

ル・コルビュジエは近代建築の五原則というのを提唱しており、このサヴォア邸はそれを具現化したものとして知られています。たとえば、写真をご覧になって分かるとおり、地上部分はスペースとなっていること(ピロティ)と、屋上が平面で屋上庭園になっていることが挙げられます。

このル・コルビュジエの提唱した建築以前は、レンガや石を積み立てて壁を作り屋根を支えるという西洋の建築手法が一般的でした。

ガウディと異なる建築への想い

偉大な建築家といえば、スペインのサクラダ・ファミリアを設計したアントニ・ガウディがいます。サクラダ・ファミリアは世界遺産にも登録されています。

ガウディ(出典:http://blog.goo.ne.jp/chakilmame/e/b36543db0a075eb70c4a12feec744478)

サクラダ・ファミリアはいまだ未完成の状態ですが、ご覧のとおりその外観はまさに芸術といってもいいほど美しいです。ル・コルビュジエの建築物とはがらっと雰囲気が変わりますね。これは二人の建築への想いの違いから来ていると考えられます。ル・コルビュジエは「住宅は住むための機械だ」という言葉を残している通り、建築に機能性を追求していたと考えられます。

世界遺産の推薦は、日本を含む7か国が共同で提出

ル・コルビュジエが設計した建築物はフランスやスイスにとどままらず、なんと日本にも残されています。それが上野にある国立西洋美術館本館です。

ル(出典:http://hix05.com/architect/public/seiyou.html)

国立西洋美術館は、日本では唯一ル・コルビュジエによって設計された建築物です。写真の通り、とても洗練された立体的な構造をしていますよね。

実はル・コルビュジエの建築は今回が三度目の世界遺産推薦となります。結果はどうなるか分かりませんが、世界遺産に登録される可能性は十分にあります。海外の建築物は難しいですが、まずは上野にある国立西洋美術館を訪れてみてはいかがでしょうか。

いかがでしたでしょうか。世界遺産に推薦されるだけあり、どれも歴史的、文化的などさまざまな観点からみても人類の宝と言えるほどの価値を備えているものばかりです。世界遺産に登録されると、たくさんの人が訪れることは間違いありません。そうなる前に、ゆっくり楽しむ旅に出られてはいかがでしょうか。世界遺産に登録されてもされなくても、これらの遺産が有している価値は変わらないのですから。

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