WHOよりパンデミック入りが発表された新型コロナウイルス。様々な情報や憶測が飛び交っており、どのような規制、情報提供が行われているのか分からない方も多いかと思います。
今回は、主に海外渡航への影響という観点から、現時点の新型コロナウイルスの蔓延状況と、各国や機関が発表情報、各国の渡航制限などを政府公表ページの情報からお伝えします。
1.【海外渡航への影響】WHO(世界保健機関)発表の新型コロナウイルスの蔓延状況レポート
WHO発表の「新型コロナウイルスの状況レポート(oronavirus disease (COVID-2019) situation reports)」の見方
新型コロナウイルスの世界における危険性評価は引き続き全世界で「非常に高い」ままとなっています。
WHOのホームページでは1月の下旬からほぼ毎日、「Coronavirus disease (COVID-2019) situation reports」というページで新型コロナウイルスの蔓延状況のレポートを公開しているので、まずは正しい状況を把握するためにもこちらのページをご参照ください。
英語での記載になっており、パッと見て分かりにくい方も多いかと思いますが、表やマッピングを見るだけでも視覚的に状況がお分かりいただけると思います。
念のため、簡単な見方をご説明しておきます。
WHOのページから、各日に公表しているレポート(例えば、2020年5月3日だとReport-104)をクリックすると、PDFの文書が閲覧できます。
5月から若干内容のフォーマットが変更になりました。この文書のトップページには、サマリーが記載されていて、全世界での感染件数と24時間以内に新たに確認された件数、さらに死亡者数と24時間以内に確認された死亡件数が記載され、それの地域別の内訳が表になっています。
「oronavirus disease (COVID-2019) situation reports」直近の状況
2020年5月29日時点で、全世界での感染件数は24時間で107,740件増加して5,701,337件(1.9%増加)、内、北・中・南米国での確認件数が56,647件と全体の半数以上を占めています。
1日当たりの感染件数では依然、ヨーロッパと米国での感染件数だけで合計8万件に迫っており、全世界の8割を占めています。
一方で1日当たりの増加率としては、一時期は10%に迫る勢いだったのが5月29日時点では1.9%となっていることから、世界のピークは過ぎつつあるようにも見えます。とはいえ、5月上旬には317万件だった感染件数が1か月で2倍近くに迫る件数になっていることを考えると、感染のスペースはまだまだ爆発的に広がっている状況です。
今月に入り、ヨーロッパをはじめ徐々に各国が厳しい規制を緩和する方針を打ち出しており、第2波が懸念されるものの早く元通りの世界が戻ってくることを願うばかりです。
WHOはこのSituation Reportとは別に「Situation Dashboard」という情報を新たに公開しました。世界の国、地域ごとの感染件数が視覚的に分かるマッピング表が掲載されており、先月からの感染件数の推移グラフや各国ごとの感染件数が表示されています。これを見ると、もはやコロナウイルスの感染が確認されていない国はほぼ無いといってよいでしょう。
Situation Reportに戻ると、次に地域・国ごとの感染件数を記した表が記載されています。簡単に地域別の感染件数の多い国を抜粋しておくと、下記のとおりです。
アジア:
中国 84,547(0)、シンガポール 33,249(373)、日本 16,719(36)、フィリピン 15,588(539)
ヨーロッパ:
ロシア 387,623(8,572)、イギリス 269,131(1,887)、スペイン 238,278(1,137)、イタリア 231,732(593)
東南アジア:
インド 165,799(7,466)、バングラディシュ 40,321(2,029)、インドネシア 24,538(687)
中東:
イラン 143,849(2,258)、サウジアラビア 80,185(1,644)、パキスタン 64,028(2,801)
北・中・南米:
アメリカ 1,675,258(16,362)、ブラジル 411,821(20,599)、ペルー 135,905(6,154)、カナダ 87,902(963)
アフリカ:
南アフリカ 27,403(1,466)、アルジェリア 8,997(140)
上記のカッコ内の数字は24時間以内の確認件数ですが、際立つのはやはりヨーロッパとアメリカです。最初に確認された中国でも8万人、それ以外の日本を含むアジアの国は1万件を少し超えたあたり、人口の多いインドでも4万人であることを考えると、桁数が1つ多いヨーロッパや、150万人を超えたアメリカの感染件数は飛び抜けています。
ここにきて増加件数が急激に増えているのがロシアとブラジル。ロシアは1日当たりの感染件数が引き続き8千件を超え、ブラジルに至っては2万件を超えており、感染が爆発的に増えているのが気になります。
そのほか、イランやインドなど依然として感染件数が高い国も多く、まだまだ終息には遠く及んでいないという現状が見えてきます。
死亡件数を見ても、アジアやアメリカなどでは高くても5~6%となっているのに対し、スペインやイギリス、イタリアでは10%を超える死亡率となっており、医療崩壊の表れと言えるのではないでしょうか。
他の国もひとたび医療崩壊が発生してしまうと、死亡率があっという間に高まってしまうでしょう。連日ニュースでも言われているように、医療崩壊を起こさないことが現時点での最優先課題であると言えます。
2.【海外渡航への影響】WHO(世界保健機関)とUNWTO(世界観光機関)の声明
新型コロナウイルス感染の広がりを受けて、2020年3月27日にUNWTO(世界観光機関)も新型コロナウイルスに関してアナウンスを発表しています。
それによると、
・新型コロナウイルスの感染拡大を防止するうえで、人の移動が最も重要な要因であり、その観点からUNWTOとしても感染拡大に向けた取り組みをWHOと協力して進める。
・新型コロナウイルスによる影響で、観光産業は最も打撃を受ける産業の1つであると認識しているが、その中でUNWTOはリーダーシップをもってこの難題に取り組んでいく。
・すでに打撃を受けている観光産業をいかに回復させるか、新型コロナウイルスに打ち勝った後の回復シナリオを実現するための施策に乗り出す。
となっています。
簡単に言えば、人の移動を伴う観光産業は新型コロナウイルスの感染拡大に大きな影響を及ぼす/受けるものであり、UNWTOとしてその責任を重く認識し、検討に乗り出すことを明言しています。
すでに大きな打撃を受けている観光産業に対し、もはや現時点でなす術無しという状況で、まずは新型コロナウイルスの拡大をWHOと協力して防止すること、そのうえでいかに観光産業を回復させるか、そのリカバリープランに焦点が移っています。
UNWTOによる新型コロナウイルスの観光産業への打撃予測
3月6日、UNWTOは新たな声明を発表し、各国、機関に対して観光産業を経済回復へのリバイバルプラン施策の重要な1つのセクターとみなして取り組むよう、要請を発表しました。
UNWTOによると、新型コロナウイルスによる影響前、2020年度の観光産業の成長率は3~4%と予測していましたが、新型コロナウイルスの影響でマイナス1~3%の成長率になると予測しています。このマイナス成長の影響は、金額ベースで言えば300~500億ドルにもなるとのこと。3~5兆円といったところでしょうか。
さらに、地域別に見た場合、アジアの影響が最も大きいとみており、アジア・東南アジアへの渡航客数は9~12%マイナスになると試算しています。
各国において続々とロックダウンの対応が取られていることで、観光はもちろん、人の動きもかなりの制限が加わっています。これにより、観光だけでなく航空や輸送といった産業にも大きな影響が出ることは必至でしょう。
アメリカでもこれまでに類を見ない経済刺激政策が相次いで発表されていますが、失業件数が急増しており、世界の不安はますます広がっている一方です。
2020年4月1日、UNWTOはCOVID-19の影響で観光産業が最も多大な影響を受けている産業であるとともに、COVID-19終息後の世界経済の回復を担う観光産業の重要性を改めて強調、観光産業のいち早い回復に向けた23の提言を公表しました。
内容の詳細にかんしてはこちらのページで紹介しています。
3.【海外渡航への影響】各国の渡航に関する規制
それでは最後に、各政府機関が公表している渡航に関する規制状況の確認方法をご説明します。
外務省の「海外安全ホームページ」を確認しよう
日本は外務省が「海外安全ホームページ」にて、各国への渡航に関する注意喚起を発表しているので、海外に旅する予定の方、または現在海外を旅されている方はこのページで最新の状況をこまめに確認するようにしましょう。
感染危険情報
外務省の海外安全ホームページでは、通常の海外渡航に関して国ごとに「危険情報」を公開しています。これは主に、テロや事件に巻き込まれる可能性の高さに応じて、レベル1~4まで設定されており、特に危険度の高い国に関してはさらに、州や都市ごとにも細かくレベルを設定して開示しているものです。
ちなみに、それぞれのレベルは下記の通り。
レベル1:十分注意
レベル2:不要不急の渡航は控える
レベル3:渡航しないよう勧告
レベル4:今すぐに国から退避するとともに、渡航禁止勧告
新型コロナウイルスの拡大に伴い、この危険情報に加えて「感染症危険情報」が公開されていますので、今後海外へ渡航される方はこちらも合わせて確認しておきましょう。
感染症危険情報のレベルも上記の危険情報とほぼ同じ水準です。
2020年5月22日現時点では、新たに下記の国がレベル3に引き上げられました。
(アジア)インド,パキスタン,バングラデシュ
(中南米)アルゼンチン,エルサルバドル
(欧州) キルギス,タジキスタン
(中東・アフリカ)アフガニスタン,ガーナ,ギニア,南アフリカ
また、下記の国は引き続きレベル3に指定されています。
(中南米)アンティグア・バーブーダ,セントクリストファー・ネービス,ドミニカ共和国,バルバドス,ペルー、エクアドル,ドミニカ国,チリ,パナマ,ブラジル,ボリビア
(欧州)ウクライナ,ベラルーシ,ロシア、アイスランド,アイルランド,アルバニア,アルメニア,アンドラ,イタリア,英国,エストニア,オーストリア,オランダ,北マケドニア,キプロス,ギリシャ,クロアチア,コソボ,サンマリノ,スイス,スウェーデン,スペイン,スロバキア,スロベニア,セルビア,チェコ,デンマーク,ドイツ,ノルウェー,バチカン,ハンガリー,フィンランド,フランス,ブルガリア,ベルギー,ポーランド,ボスニア・ヘルツェゴビナ,ポルトガル,マルタ,モナコ,モルドバ,モンテネグロ,ラトビア,リトアニア,リヒテンシュタイン,ルクセンブルク, ルーマニア
(中東)アラブ首長国連邦,オマーン,カタール,クウェート,サウジアラビア、イスラエル,イラン,エジプト,トルコ,バーレーン
(アフリカ)ジブチ、コートジボワール,コンゴ民主共和国,モーリシャス,モロッコ
(アジア)インドネシア,韓国,シンガポール,タイ,台湾,中国,フィリピン,ブルネイ,ベトナム,マレーシア
(大洋州)オーストラリア,ニュージーランド
(北米)カナダ,米国
これ以外の国はすべてレベル2に指定されています。つまり、現時点では海外のいかなる国へも不要不急の渡航を自粛する要請が出ていることを意味しており、これは世界各国でも同じ状況とみて良いと思います。世界的に人の流れが遮断されるという、前代未聞の事態となってしまいました。
以上、2020年5月29日時点の状況を共有しました。今後1週間に1度の頻度で状況のアップデートを行っていく予定ですが、皆様も国や政府機関が発表している正しい情報に基づいて行動するようにしましょう。
日本では緊急事態宣言が全国で解除となりましたが、北九州市ですでに第2波の到来か、と言われる集団感染が発生するなどまだまだ予断を許さない状況が続いています。
新しい生活様式への慣れない対応が必要になるなど、まだまだストレスの多い日が続きますが、再び旅ができる日が来ることを信じて、皆様くれぐれもお身体にはお気をつけてお元気にお過ごしください!