2020年に始まった新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、2022年に入ってもまだ海外渡航に制限が残るなど引き続き大きな影響が及んでいます。
徐々に規制が緩和され、今後は海外旅行や一人旅も増えていくことを期待するばかりですが、今回は海外一人旅から日本への帰国時・入国時の注意事項と、事前に必要な手続きを解説します。
日本政府のホームページで公表されている最新の情報を確認する
確認する政府(厚生労働省)のホームページ
新型コロナウイルス感染症の状況は文字通り日々変化しているわけですが、それと経済状況は各国の対応状況等も踏まえて日本政府による入国時の制限、いわゆる「水際対策」も頻繁にアップデートされて方針が変わっています。
今後はどちらかというと緩和される動きに進むので、追加の書類準備や手続きが増える可能性は低いと思われるものの、渡航先の感染状況によっては入国後の隔離措置の制限が課される可能性もまだまだあるため、海外旅行・一人旅を計画している方は渡航先での入国受け入れだけでなく、帰国する際の制限についても情報を確認して慎重に検討するようにしてください。
渡航先の入国制限を調べる時には外務省の渡航情報を確認しますが、日本の入国制限の状況を確認する時には厚生労働省のホームページをチェックします。
現時点の日本における水際対策(入国制限)の方針は、こちらのページを参照してください。
念のため、厚生労働省のホームページのトップ画面からのアクセス方法(パンくずリスト)も記載しておきます。
ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 健康 > 感染症情報 > 新型コロナウイルス感染症について > 水際対策に係る新たな措置について
日本の水際対策(入国制限)と必要な対応事項
2022年5月時点の日本への入国時に必要な対応は以下の通りです。
入国時に必要な対応事項
- 出国前72時間以内に受けた検査の結果の証明書
- 検疫所が確保する宿泊施設での待機・誓約書の提出
- スマートフォンの携行と必要なアプリのインストール
- 質問書への回答と提出
- ワクチン接種証明書の提示(任意)
上記の内、面倒なのが「出国前72時間以内に受けた検査の結果の証明書」つまりPCR検査と、「スマートフォンの携行と必要なアプリのインストール」です。
出国72時間前に渡航先の病院や検査機関でPCR検査を受けなければならないのと、必要なアプリ(「My SOS」)をインストールしておかなければなりません。
この2点については渡航先を出国する際、空港のチェックイン時に提示を求められます。(国や航空会社によるものと思われますが、筆者はギリシャからターキッシュエアラインズで帰国する際にいずれも提示を求められました。)
必要なアプリのインストール(「My SOS」)については、日本への入国時にスマホや通信手段を持たない方にスマホの貸し出しを行っていることから渡航先を出国する時にはインストールしていなくても問題ないのかもしれませんが、事前にインストールして必要事項の記入と書類をアップロードしておけば、入国時に「ファストトラック」が適用されて手続きを簡素化できます。
PCR検査については、これが無いと日本への上陸が拒否されることになるため最悪の場合は渡航先への送還ということもあり得るかもしれず、必ず受けておく必要があるので注意してください。
それでは各対応事項の詳細を説明します。
出国前72時間以内に受けた検査の結果の証明書(PCR検査)
事前の準備
大使館・領事館にPCR検査を行っている医療機関を問い合わせてみる
2022年5月現在、日本人を含むすべての日本への入国者は入国前72時間以内に受けたPCR検査の検査結果の提出が義務付けられており、渡航先を出国する前に渡航先の国の医療機関や検査機関でPCR検査を受ける必要があります。
欧米に関しては日本よりもPCR検査体制が充実しているため、事前の予約不要でPCR検査を提供してくれる機関が多いと思いますが、滞在先近くの病院や検査機関に事前に確認しておきましょう。
筆者はギリシャのアテネへの渡航前に在日ギリシャ領事館に問い合わせを行ったところ、領事館からPCR検査を提供しているギリシャの病院一覧が記載されたファイルを提供してもらいました。
おそらくギリシャのように海外から積極的に観光客などの受け入れを行っている国では、このように大使館や領事館から渡航先のPCR検査を提供している医療機関のリストを入手できるかもしれませんので、事前に問い合わせてみることをおすすめします。
日本政府が指定しているPCR検査結果フォームをプリントアウトしておく
入国時に提出が必要な72時間以内のPCR検査結果については、PCRの検査方法や検査結果に記載されている必要がある事項など細かく指定されており、日本政府が指定しているフォーマットでの提出が強く推奨されています。
このため、あらかじめ日本政府が指定しているフォーマットのPDFファイルをダウンロードしてプリントアウトしておき、現地でPCR検査を受ける際に提出して、記載してもらうようにしておくと良いでしょう。
筆者はギリシャのアテネでPCR検査を受けた際、日本政府のフォーマットも合わせて提示して記入してもらいました。ギリシャは観光立国なので観光者には親切で、受付してくれた女性の方も日本が入国者にPCR検査を求めていることは認識しているらしく、指定のフォームを渡すと「あ、これね!」という感じですんなり受け取って記入してくれました。
実際にPCR検査結果を受け取った時にはこのフォームと合わせて病院の検査結果通知書も合わせてもらうことができました。
日本政府指定のPCR検査結果フォームはこちらのページで公表されていますので、ダウンロードしておきましょう。
PCR検査を受けるに当たっての留意事項
日本への入国に必要なPCR検査についてのQAもこちらのページで公表されているので、一通りざっと目を通しておくと良いと思いますが、ここでは特に留意しておく事項を簡単にご説明しておきます。
「出国前72時間」の考え方
まず注意しないといけないのは、「出国前72時間」という部分です。この72時間というのは検査結果ではなく、検査を受けたタイミングを指していることに注意してください。
例えば、出国の90時間前にPCR検査を受けて72時間前に検査結果通知が発行された場合はNGになります。
日本政府指定のフォームには、「結果判明日」と「検体採取日時」の2つが記載項目として挙がっていますが、出国前72時間というのは「検体採取日時」のことです。
PCR検査での検体採取方法
検体採取方法についても細かいですが指定があるので注意しましょう。
基本的には鼻咽頭ぬぐい液か唾液になると思いますが、これもPCR検査を受ける際に具体的な検体採取方法を念のため確認してから受けるようにしてください。
トランジットがある時
日本への帰国の際にトランジットがある場合も留意が必要です。
基本的にトランジットがある場合であっても、トランジットする空港から出ずに空港内に留まる場合は、たとえ一度入国手続きが取られたとしてもその国に「入国」したとは捉えません。
ですので、トランジットがある場合でも「出国前72時間」というのは一番最初の飛行機に乗った国、つまり渡航先を出国する日時から計算することになります。
一方、トランジットで一時的にも空港の外に出てホテルなどに宿泊した場合はこの国に「入国」したことになるため、「出国前72時間」というのはこのトランジット先の国を出国する日時から計算することになります。
このため、トランジットでもし空港から出てホテルに宿泊される際には十分に気をつけてください。
フライトが遅延した場合
基本的に「出国前72時間」というのは渡航先の国を出るフライトの時間から計算することになりますが、もしフライトが大幅に遅延してしまった場合はどうなるのでしょうか。
これについては政府が公表しているQAに回答がありますが、72時間を超えて24時間以内に出発する場合は当初のフライトから起算して72時間前に受けた検査結果も有効であるとされています。
一方、72時間からさらに24時間を超える場合は再度PCR検査を受診が必要になります。
このためPCR検査のタイミングは出国日の前日などに受けるなど、72時間から少しでも余裕があったほうが良いでしょう。
PCR検査結果を取得した後
無事にPCR検査結果を日本政府指定のフォーマットで取得し、問題なく陰性であることが確認できた後は後ほど開設する「My SOS」アプリへのアップロードまで済ませておくことをおすすめします。
筆者は日本政府指定のフォームに検査機関のサイン等が入ったものと、検査機関が発行した検査結果の両方を「My SOS」にアップロードしました。
検疫所が確保する宿泊施設での待機・誓約書の提出
日本への入国時の対応事項、2点目は誓約書の提出です。
具体的な内容についてはこちらのページで確認が可能ですが、入国前のPCR検査の受診完了と必要なアプリ(「My SOS」)のダウンロードへの協力確認と署名を求めています。
ちなみに、「いいえ」を回答した項目に関しては「職員が事情を伺う」ことになっており、相当やむを得ない事情がある場合を除いては認められないものと思われます。
また、誓約違反があった場合には氏名等が公表されることになるようで、これまでに公表されている方は140名を超えています。
なお、誓約書は質問書と一緒に日本へのフライト時に飛行機の中で配布されるのでその時に記入すれば問題ありません。さらに、「My SOS」でも回答することが可能で、事前に「My SOS」で回答しておけば入国時に書類での提出は不要になります。
スマートフォンの携行と必要なアプリのインストール
3つ目の対応事項はスマートフォンの携行と必要なアプリのダウンロードです。
必要なアプリというのは「My SOS」というアプリですが、日本に入国した後にこのアプリで位置情報を提供するとともに待機・隔離措置が必要な場合はこのアプリを利用して体調の報告を行うことができます。
日本に入国時にアプリのダウンロード状況と必要な設定がなされているかを空港の職員が確認するので、この時に職員にアプリをダウンロードしてもらえば問題ないと思いますが、先ほどお話ししたように出国地の空港や航空会社によっては帰りのフライトのチェックイン時にアプリがダウンロードされているか、スマホの画面の提示を求められる可能性があります。
ちなみに、帰国時のフライトのチェックイン時に求められる場合であってもアプリのインストールを確認するだけですので、スマホの画面を開いてアプリのアイコンが表示されていることを提示できれば問題なく、ネット通信ができる状況でなくても問題ありません。
「My SOS」の事前登録(ファストトラック)について
「My SOS」は基本的には入国後の体調管理等のチェックのためにインストールが求められるのですが、入国前に事前に必要な情報や書類をアップロードしておくことで入国時のチェックや手続きをパスすることができます(ファストトラック)。
ただし、ファストトラックを利用することが可能なのは成田国際空港、羽田空港、中部国際空港、関西国際空港、福岡空港のみとなっており、アプリ上での事前登録は搭乗便到着予定日時の6時間前までに完了が必要ですので注意してください。
事前登録を行うのは以下の4点です。
My SOS事前申請項目
質問票WEB
誓約書
ワクチン接種証明書
出国前72時間以内の検査証明書
質問票は次項でご説明しますが、入国前14日間の行動と体調に関して確認するものになります。
誓約書については先ほどご説明した通りです。
ワクチン接種証明書に関しては任意ですが、3回接種を完了している方は入国後の隔離・待機期間が緩和されるためアップロードしておきましょう。アップロードは内容を確認できれば問題ないため、スマホカメラで撮った画像をアップロードすれば問題ありません。
出国前72時間以内の検査証明書(PCR検査)についても先ほどご説明した通りです。結果を取得出来たら日本政府指定のフォームに検査機関のサインと記入が入ったものをアップロードしましょう。こちらもスマホカメラで撮った画像でOKです。
「My SOS」でファストトラックの申請手順についてはこちらのページで画面付きで説明がありますので、ぜひ参考にしてください。
質問書への回答と提出
続いて質問書についてご説明します。具体的な質問事項についてはこちらのページを参照してください。
大きく入国者情報、日本滞在情報、流行地域滞在情報、体調情報、フォローアップの5項目からなっています。
回答次項はパスポートに記載されている個人情報や帰国時のフライト情報、入国前14日間に滞在した国と体調の状況などになります。
帰国時のフライト情報は、座席まで決まっている必要は無く、便名まで分かればもんだいありません。
こちらの質問書も「My SOS」で事前に申請、登録することが可能ですが、そうでない場合は帰国時のフライトにて飛行機内で配布されますのでそちらに記入後、入国時に提出してください。
ワクチン接種証明書の提示(任意)
最後に、任意ですがワクチン接種証明書の提示についてご説明します。
日本政府は日本に入国後、一定の隔離・待機措置を求めていますが、ワクチン3回接種が完了している場合はこの措置が緩和されます。
入国時の制限(水際対策)についてはこちらのページで最新の情報を確認することができますが、指定国・指定地域以外からの帰国の場合、3回のワクチン接種を完了していれば帰国後の隔離・待機制限はありません。
2022年5月現在、指定国・指定地域に指定されているのはわずか7か国に過ぎないため、ワクチン接種を3回完了していれば多くの場合日本への帰国後に隔離・待機制限が無いことになります。
ワクチン接種証明書は接種済証など、接種を受けたことが分かる書類の写し等を住んでいる地域の自治体に送付すれば1週間から10日程度で発行してもらうことが可能です。
ヨーロッパなどでは特に屋内施設や公的な施設に入る場合にはワクチン接種証明かPCR検査の陰性証明が求められることがあるため、英語で記載されたワクチン接種証明書を事前に入手しておくと良いでしょう。
日本への入国時の手続き
最後に、実際に日本に帰国・入国する時の流れについてご説明します。
日本に入国時にはこれまでご説明してきた項目の書類の提出、提示が求められますが、流れ作業のようにスムーズに進みますし、職員の方が丁寧に説明してくれるため心配する必要はありません。
面倒なのは、出国前72時間以内のPCR検査結果を提出するにも関わらず、入国者全員に対して唾液による検疫検査が行われ、その結果が出るまで待つ必要があることです。(イミグレーションもこれら一連の手続きが完了した後になります。)
先ほどファストトラックについてご紹介しましたが、結局唾液検査の結果が出るまで待つ必要があるため、ファストトラックを設ける意味はチェックする側には効率化につながるのかもしれませんが、入国する側にとってはほとんど意味が無いように感じました。
筆者はトルコのイスタンブルから日本に帰国しましたが、帰りのフライトはガラガラな状況で乗客者も普段よりずっと少なかったと思います。それでも全ての手続きが完了して空港の到着ロビーにたどり着くまで1時間半以上かかりました。
これが、満席のフライトで他のフライトと入国のタイミングが重なっていればと思うともっと時間がかかったことでしょう。
筆者はギリシャに一人旅をしましたが、ギリシャでの入国はイミグレーションでも入国前のPCR検査結果の書類はほとんどノーチェックで、簡単に入国できました。日本でのチェックインやトルコでのトランジット時に書類の提示が求められ、そこでチェックがされているからだと思います。
ギリシャだけでなくヨーロッパやアメリカをはじめ、多くの国で入国制限が緩和されているにも関わらず、日本は全ての入国者に入国前72時間以内のPCR検査結果の提出を求める上に、入国時に唾液検査、そしてアプリのインストールまで求めている状況。
正直、ここまでやる必要があるのか疑問を感じずにはいられません。円安になっている今、海外から日本へは観光・旅をしやすい状況になっていると言えるので、日本もストレスのない入国が可能になるようメリハリをつけた対応を実現してほしいと強く感じる次第です。
以上、皆様の海外旅のご参考になれば幸いです。