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【徹底ガイド】東大寺のお水取り(修二会)に行こう!

奈良の世界遺産、東大寺は奈良の大仏として世界的にも有名ですが、東大寺が持つ歴史や文化財の価値も日本が世界に誇る大きな財産です。

今回は、東大寺で行われる多くの祭事の中でもとりわけ重要で、かつ有名なお水取り(修二会)をご紹介します。2020年も3月1日から14日の2週間にかけて行われます。

毎年多くの人で賑わう東大寺のお水取り(修二会)、その歴史や内容だけでなく参列する時に役立つ情報までお伝えします!

東大寺のお水取り(修二会):歴史と成り立ち

悔過(けか)の行法と修二会

日本に仏教が伝来してからというもの、日本国内に仏教信仰が根付くとともにさまざまな仏事や法会が登場しました。その中でも悔過(けか)は、8世紀から9世紀にかけて盛んに行われた法会の1つです。

もともと悔過の始まりは、大化の改新でも有名な蘇我蝦夷(そがのえみし)が642年に雨乞いを行ったものとされています。今から1200年以上の前に始まったこのような法会が、現在も続いていることを考えただけでも歴史の重みと日本人が大事にしてきた伝統を感じますよね。

その字から連想できる方もいらっしゃるかと思いますが、悔過とは簡単に言うと仏や菩薩に過去の罪や過ちを懺悔することで除災招福、五穀豊穣や病の治癒などの効用を得ることを目的として行われたものです。

752年に東大寺大仏の大仏開眼供養絵が行われたことは歴史の授業でも学んだかと思いますが、東大寺が創建された時代はこの悔過の行法が盛んに行われた時代でした。

 

修二会は悔過の行法が行われる中で登場しました。
ちなみに修二会は東大寺固有の法会ではなく、同じ奈良の世界遺産である薬師寺でも修二会の法会は行われており、別名、花会式とも呼ばれるなど有名です。

こちらも、「二」という言葉が含まれていることから連想できる方もおられるかと思いますが、修二会という名前は旧歴の2月に行われた法会であることに由来しています。

今でも日本人にとってお正月は大事な祭日であるように、昔の人にとっても新年の時期は特に重要な意味合いを持っていました。が、それは現代に生きる我々よりももっと切実な理由によるものです。

旧暦の新年や2月は春の訪れが近くまで来ている時期でもあり、その先には農作物の収穫が待っています。今もそうですが、収穫の成功、つまり五穀豊穣は昔の人にとっては特別に大事なことであり、新年を迎えた1月や2月にこれを祈る法会が多く行われることになったのです。その1つが修二会でした。

東大寺、二月堂のお水取り(修二会)の始まり

東大寺の修二会は、実忠という僧により752年に始められたと考えられています。

東大寺を創建したのは聖武天皇ですが、聖武天皇は良弁という僧に華厳宗の教えを乞い、東大寺を開山したのはこの良弁でした。そして、実忠は良弁の弟子に当たります。

良弁が亡くなった後、実忠は東大寺の運営を一手に担うとともに、一方で華厳経の大学頭を21年もの間務め、寺内法会への奉仕も行っていました。

実忠が自らの業績を振り返りまとめた「実忠二十九箇条」によると、実忠は十一面悔過・涅槃会(ねはんえ)・半月読経を長年奉仕してきたと記載しており、この中の十一面悔過が修二会の始まりとされています。

不退の行法

実忠が始めた修二会は、その始まりから1200年以上もの間、現在に至るまで一度も途絶えることなく毎年行われてきました。

もちろん、これほどまでの長い年月の間途絶えることなく修二会を行うことは、並大抵のことでは実現できるわけもなく、何度となく開催が危ぶまれたことがありました。

平安時代後期の12世紀には、平氏による南都焼き討ちにより東大寺も正倉院や二月堂を除くほとんどの主要な伽藍が焼失し、修二会も存続の危機に立たされます。寺の執行部は中止の意向を示しましたが、修二会の存続を強く望んだ「同心之輩」15人の結束により続行されました。

その後も戦国時代の戦乱、江戸時代の火災や第二次世界大戦など、多くの危機を乗り越えながら、人々の思いによって現在まで続けられてきた東大寺の修二会。

今私たちが見ている修二会は、言ってみれば1200年以上前に生きていた人たちが行っていたことを見ているのです。そう考えるとすごいことだと思いませんか。

東大寺のお水取り(修二会):法会の内容と行法

法会の概要

東大寺のお水取り(修二会)旧暦の2月に行われていたことから、3月1日から14日(15日の未明)にかけて行われます。
ただし、その準備期間を含めると2月の下旬から始まることになり、お水取りに従事する僧侶たちは1か月近くかけてこの法会を実行することになります。この期間の長さから見てもお水取りが重要な法会としての位置づけであることがお分かり頂けるかと思います。

お水取り(修二会)の14日間は上七日、下七日に分けられ、さらに各日の行法は日中(にっちゅう)・日没(にちもつ)・初夜(しょや)・半夜(はんや)・後夜(ごや)・晨朝(じんじょう)という6つから成り、このことから六時の行法と呼ばれています。

まず、大きく2つに分けられている上七日と下七日についてご説明しましょう。この2つの違いは、簡単に言えば本尊の違いということになります。

先ほど、実忠が始めた十一面悔過が修二会の始まりとお話しした通り、二月堂の本尊は十一面観音です。ですが、二月堂には2つの十一面観音が安置されており、それぞれ大観音、小観音と呼ばれています。

上七日は大観音を本尊として行われる法要で、下七日は小観音を本尊として法要を行っています。大観音と小観音の2つの二体が存在する理由について、はっきりしたことは分かっていませんが、創作された時期としては小観音が当初の悔過で用いられていたと考えられています。

なお、いずれの観音も絶対秘仏とされ、練行衆であってもその姿を拝むことはできません。

法要は二月堂内で行われるため、お水取り(修二会)を行う僧(練行衆)たちは1日のほとんどを二月堂で過ごすことになりますが、大まかな流れとしては昼に食堂(じきどう)で食作法を行った後お堂に上がり、日中・日没の法要、それが終わるといったん参籠宿所に下ります。そして午後7時、お松明の灯りで再度二月堂に上堂し、初夜・半夜・後夜・晨朝が行われることになります。

法要を行う僧は練行衆と呼ばれ、今では11人の練行衆によってお水取り(修二会)が執り行われています。この11名は四職と呼ばれる4名と7名の平衆から構成されており、初めて参加する僧は「新入」と呼ばれ、また四職へは参篭の回数によって平衆から昇進するなど、取り決めは細かく決められています。

 

特別な法要

上の図は、14日間のお水取り(修二会)の法要をまとめたものです。ざっと見ると毎日同じような法要が行われているように見えますが、よく見ると特定の日にしか行われていないものもあることがお気づきになると思います。そのいくつかを簡単にご紹介しましょう。

実忠忌(3月5日初夜)

旧暦の2月5日が実忠の命日とされていることから、3月5日の初夜に供養法要が設けられています。

過去帳(3月5日、3月12日初夜)

聖武天皇を始めとする東大寺ゆかりの人々や、二月堂、お水取り(修二会)にゆかりのある人の名前が記された「過去帳」が読み上げられます。

小観音出御・小観音後入(3月7日)

上七日から下七日に切り替わる3月7日に、本尊とする小観音を内陣後堂からお運びして内陣正面、大観音の前に安置する儀礼。

牛玉日(3月8日、3月9日初夜)

初夜に牛玉札・陀羅尼札が刷られます。これは護符の一種で、必要以上に刷らないように初めて参加する練行衆は誓約書に署名をします。この誓紙には牛玉札が始まった時から署名した練行衆の名前が記されています。

お水取り(3月12日後夜)

二月堂の麓にある閼伽井の井戸から水をくみ上げて、十一面観音にお供えされます。

この由来として、実忠が神名帳を読み神々を勧請した時、若狭の遠敷明神は魚を捕っていたため遅刻してしまい、そのお詫びに二月堂の近くに香水を出す約束をした、というエピソードが「二月堂縁起」に記載されていることによります。

この約束の後、岩から黒・白の二羽の鵜が飛び出し、その跡から泉が湧きだしたとされていて、これが閼伽井の井戸と言われています。

閼伽井の井戸のそばのお堂の屋根に注目してみてください。鳥の形をした装飾がほどこされていますが、これはこの由来に基づくものです。

東大寺のお水取り(修二会):参拝ガイド

期間中の境内

お水取り(修二会)が行われている期間中は、いつにも増してたくさんの参拝客が訪れており、東大寺の境内でも交通整理が行われています。特に駐車場に関しては関係者であっても駐車時間、場所に制限があるようです。
2020年は3月1日、7日、8日、14日が土日のため混雑が予想されます。また、12日は籠たいまつの日となり、こちらもやや混雑する可能性があります。

お松明の観覧ガイド

多くの参拝客の目当ては、初夜の法要が始まる前に行われるお松明です。

まず初めに松明を持った僧が走って二月堂に駆け上がっては降りて行き、その後に大きなお松明を持った僧がゆっくりと上堂し、二月堂の欄干から大きなお松明を振りかざし、回転させ、その後欄干の端まで走っていく姿はダイナミックであり迫力も満点です。

そんなお松明を思う存分観覧するためのポイントをいくつかご紹介しておきます。

二月堂に行くタイミング

午後5時を過ぎると徐々に人が集まってきます

二月堂は東大寺でも高台にあるため、お松明は遠くからでも観ることが可能で、必ずしも二月堂まで行く必要はありません。ですが、お松明の火の粉を被ることが厄除け、縁起が良いとされているため、多くの人が二月堂に集まるわけです。

是非とも火の粉を被りたい、迫力あるお松明を観たい!という方はぜひ二月堂の真下にある芝生スペースに行きましょう。一方で観る場所によってそこでしか味わえない良さもあるので、2回、3回と観る機会のある方は場所を変えて観られると面白いと思います。

芝生スペースも限られているため、スペースが満員になると中に入ることが出来なくなります。芝生内の場所を選ばないのであれば、平日であれば1時間前の午後6時でも中に入ることが出来ると思います。土日の場合はもう30分ほど早く到着しておいた方がよいでしょう。

芝生スペースの外側もある程度の人が入ると入ることが出来なくなるので、こちらも気を付けましょう。

絶好のポジションを取りたい場合は、平日であっても午後4時過ぎには到着しておいた方が良いです。そこから午後7時まで、3時間弱の時間を待つ忍耐が必要ですが。。

場所取りとポジション

お松明を間近で観る場合の場所取りをご紹介します。

上堂するお松明

上堂するお松明を間近で堪能する場合

二月堂に上堂する階段はお堂の両側にありますが、お松明が上がるのは北側(三月堂、四月堂から二月堂を見て奥側の階段)になります。

階段と芝生スペースの間には柵が設けられ、芝生スペースには臨時の木の階段が設置されていますが、この踊り場部分が最も良いポジションです。

ですが、スペースが狭いため、このポジションを確保できるのは数名程度。一番乗りする意気込みが無ければ確保は難しいでしょう。

ちなみに、階段スペースは日によって待機OKの場合とNGの場合があるようです。お松明の時間が近づくと警備員(警察官?)が見回りに来ますが、人によって危ないと判断した場合は階段スペースから移動するように指示をされます。

お松明から散る火の粉

お松明の火の粉を被りたい場合

お松明の火の粉を被りたい場合、芝生スペースの一番上段の両端のいずれかのスペースを確保すると確率が上がります。

芝生スペースの一番上の段もスペースとしては狭く、1列でしか待機できません。両端は特に早く埋まってしまうので、こちらも早めの時間帯に到着しておく必要があります。両端で無くても良いなら午後5時~5時半でも空きスペースは見つけられると思います(平日の場合)。

なお、火の粉は当日の天候や風の強さ、お松明の燃え具合によって変わってくるのである意味、運の問題と言えますが、芝生スペースの両端、なるべく上段を確保すると良いと思います。

あると便利な道具

 早めに行って場所を確保したのは良いものの、そこからお松明の始まる午後7時まで待つのはなかなか大変です。3月の上旬ですので、日によっては真冬並みの寒さのこともあり得るでしょう。そんな時のために準備しておいた方が良いものをいくつかご紹介します。

レジャーシート

お松明が始まる30分~1時間前までは、多くの人が座ってその時を待っています。芝生スペースは芝生なので、雨の後など濡れていることも多く、レジャーシートがあると便利です。

インスタントチェア

レジャーシートより持ち運びが大変ですが、ごつごつした地面に座るよりインスタントチェアだとラクだと思います。

飲み物

トイレに行きたくならない程度に水分補給をしておきましょう。

カイロ/防寒グッズ

やはりずっと待ち続けるのは寒さとの戦いですので、カイロや風を通さない防寒グッズがあると安心です。

注意事項

場所取りだけしてその場を離れるのはNGです。

また、看板も立てられていますが、お松明の間はフラッシュ厳禁です。お松明はあくまでも厳粛な法要であって、見世物ではありません。練行衆の邪魔にならないようくれぐれもフラッシュは焚かないようにしてください。一眼レフ、ミラーレスなど良いカメラを持たれている方だと、補助光も光らないよう、設定方法を予め確認しておいてください。

お松明の後

お松明自体は20分ほどで終わります。

もちろんその後も二月堂で法要が続くわけで、多くの参拝客はお松明が終了すると二月堂に上堂して参拝をするため、三月堂、四月堂に近い階段に行列ができます。

芝生スペースで観覧していると、その後の参拝順序が後ろの方になってしまうので、気を付けてください。

二月堂に上堂すると、堂内の局のスペースに上がって法要のための御経を聞くことができます。なお、局は土足厳禁のため、靴を脱いで上がりましょう。

段ボールの小箱の中にはお松明の燃え残りが

また、二月堂の隣にある休憩スペースでは燃え残ったお松明が集められた箱が置かれていて、誰でも自由に持ち帰ることができます。親切にお松明を巻く新聞紙も準備してくれています。

お松明後、二月堂付近の芝生や地面で何かを探している人がいますが、この人たちは燃え落ちたお松明を探しているのです。

しばらくすると、火災を防ぐため、寺の方たちが二月堂全体にホースで水巻きをするのですが、この水巻きが始まるとお堂や休憩スペースから出て降りることができなくなるので、気を付けてください。

東大寺のお水取り(修二会):宿泊ガイド

お水取り(修二会)の法要はお松明の後も夜中まで二月堂で行われます。

せっかくのお水取り、お松明だけで帰ってしまうのはもったいないですし、時間を気にせずに過ごしたいですよね。

そこで、東大寺から徒歩圏内にあるおススメのホテルをご紹介しましょう。

小さなホテル 奈良倶楽部

東大寺の北側、閑静な住宅街の中に溶け込むように建っているのがこちらの「小さなホテル 奈良倶楽部」です。

その名の通り、こぢんまりとしてますがおしゃれなホテルで、ご夫婦で営まれているのでとてもアットホームな雰囲気があります。

客室数は8室のみ。ちゃんと一人旅向けのシングルのお部屋も用意されているのが嬉しいところです。

こちらのホテルをおススメする理由をいくつかご紹介しましょう。

東大寺までのアクセスの良さ

まず、何といっても東大寺までのアクセスの良さでしょう。東大寺の北側にあるため、二月堂に行くにも便利で10分ほどで辿りつけてしまいます。

お水取り(修二会)の手厚い案内サポート

ツインタイプの部屋

お水取り(修二会)の時期になると、入口の談笑スペースにはお水取り関連の書籍をたくさん並べてくれていますし、この時期だけ、寒さで冷えた体を温めてくれる生姜湯のサービスもあります。

また、お水取りのことは何でも教えてくれますので、初めてで一人旅でも安心です。

さらに、建物の合鍵も借りることが出来るので、門限を気にせず夜中までお水とり(修二会)の法要を聴聞することができます。

絶品!バランス&ボリューム満点の朝食

栄養もボリュームも満点!絶品朝ご飯

最後に、何といっても手作りの朝食がおススメ!

こちらはオプションですが、近くにコンビニも無く夜中までお水取り(修二会)に参列した後はしっかりと朝食で栄養とエネルギーを取りたいですよね。

朝食は朝8時~8時半ごろ開始のため、夜遅くまで外出していると少し朝起きるのが億劫かもしれませんが、ぜひこの朝食を堪能してください!

 

一人旅の場合、一人旅応援プランで500円引きのため、通常料金は素泊まりで6,000円、朝食付きで7,500円です(2020年2月時点)。

ホテルの予約等はこちらのページをご覧ください。

東大寺のお水取り(修二会):番外編

奈良国立博物館で開催中のお水取り展

お水取り(修二会)の期間、奈良国立博物ではお水取り展が開催されています。

お水取り(修二会)を観る前にこの展示イベントに行っておくと、さらにお水取り(修二会)を深く知ることができるので、ぜひ時間があれば立ち寄ってみてください。

 

いかがでしたでしょうか。

1年に一度、世界遺産東大寺の大事な法要、お水取り(修二会)。

1200年以上も続いて行われている不退の行法、ぜひ一度はその厳粛な空気を肌で味わってみてください!

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