【世界遺産】唐招提寺を100倍楽しむためのマメ知識(準備編:後編)

奈良の世界遺産の1つに数えられる、唐招提寺。

前回は唐招提寺が創建された奈良時代の当時の仏教制度と、鑑真和上についてご紹介しました。

今回は、唐招提寺についてご紹介します!

 

前回の記事をまだご覧になっていない方は、先に下記のリンクより記事を読むと、よりお楽しみいただけると思います!

【世界遺産】唐招提寺を100倍楽しむためのマメ知識(準備編:前編)
【世界遺産】古都奈良の文化財を楽しむために知っておきたいマメ知識(前編5選)
【世界遺産】古都奈良の文化財を楽しむために知っておきたいマメ知識(後編5選)

3.唐招提寺創建の理由

唐招提寺:講堂

6度目の渡航により、やっとの思いで来日した鑑真は、早速授戒を行い、戒律を日本に定着させました。

ところで、「戒律」というのは一朝一夕で身に付くものではなく、師の指導の下、集団生活をしながら実践しなければ身に付くものではありません。

当時の日本には、授戒を行える高僧のほか、そのような修行の場を維持し、授戒した僧が安心して修行を行えるよう、衣食住の手当を行える環境が必要でした。

そのような環境を作るために建立されたのが、唐招提寺だったのです。

朝廷から許可を得て、平城京内の土地を譲り受けた鑑真は、そこに唐招提寺を創建しました。

他の奈良の世界遺産との違い

これまでお話ししてきた通り、唐招提寺は鑑真によって創建されたお寺です。

一方、同じく奈良の世界遺産に登録されている東大寺や薬師寺は、天皇による護国のために建立されたお寺。そして、興福寺や元興寺は当時実権を握っていた蘇我氏や藤原氏により建立されました。

いずれも、朝廷(国)や権力者によって建てられたお寺になります。

それに対して、唐招提寺は、1人の僧である鑑真和上によって創建され、その目的も戒律の普及のための場を作るためでした。

このように、唐招提寺はその建立目的も、創建者も、他の世界遺産とは明らかに性格が異なるのがお分かりいただけるかと思います。

もう1点、唐招提寺の特徴として、その伽藍建物の多くが寄進による造営であることが挙げられます。

当時の唐では、寄進による寺院の造営は珍しことではありませんでしたが、日本ではまだまだ珍しいことでした。

唐招提寺を訪れると、東大寺や興福寺のような荘厳さ、薬師寺のような華やかさとは違った、質素な雰囲気を感じますが、それはこのような創建の背景があるからかもしれません。

現在ある唐招提寺の伽藍は、鑑真和上が生きておられた間にすべて完成したわけではありません。

創建目的の通り、戒律を学ぶ場として造営された講堂は、鑑真和上の存命中に造営されました。ですが、金堂は鑑真和上が亡くなった(遷化)した後に完成しています。

4.金堂のヒミツ

唐招提寺の金堂

天下三戒壇との関係

仏門に入るための授戒を行う場を「戒壇」と言いますが、日本には「天下三戒壇」と呼ばれる、奈良時代に造られた戒壇が3か所あります。

1つ目は、鑑真自らが聖武天皇を始めとして授戒を行った東大寺、残る2つは下野薬師寺と筑紫観世音寺になります。

下野薬師寺は栃木県、筑紫観世音寺は大宰府にあります。

唐招提寺の金堂に安置されているのは、盧舎那仏、薬師如来、千手観音像の御三体。

実はこの三体、天下三戒壇の東大寺、下野薬師寺、筑紫観世音寺のご本尊と同じなんです。

天下三戒壇のご本尊を一堂に金堂に集めた唐招提寺は、まさに戒壇の総本山とも言えるべき場所ではないでしょうか。

名著「天平の甍」から、金堂の鴟尾を想う

金堂の鴟尾

唐招提寺の金堂、屋根の両端に付けられた鴟尾は東大寺大仏殿のそれと合わせて、とても有名です。

(鴟尾については、【世界遺産】古都奈良の文化財を100倍楽しむためのマメ知識(後編:5選)をご覧ください。)

ところで、鑑真が日本に渡来するまでのドラマを、伝戒の師を日本に招聘する目的で唐に渡った興福寺の僧、普照の視点から描いた「天平の甍」という名著があります。

この小説では、普照を含む、唐に渡った僧の葛藤や苦悩、信念などを丁寧に描くことで、鑑真の日本渡来をまた違った角度から知ることができるので、是非とも一度は読んでいただきたい本です。

小説では普照と同じく、唐に渡った日本人についても描かれています。

日本への帰国がかなった普照のほか、唐に身を置くことを選んだ者、日本への帰還を想い続けながら、それが叶わなかった者など、運命に翻弄される当時の日本人の姿を知り、それに思いを馳せると胸が熱くなることでしょう。

そして、小説の最後、鑑真と共に日本に帰還した普照の元に、唐からあるものが届きます。

それが、この鴟尾だったのです。

唐の誰が自分に宛て、何のために、何を思いこの鴟尾を送ったのか、普照は唐での出会いや出来事を回想しながら、鴟尾を唐招提寺の屋根に取り付けた-。

「天平の甍」を読んでから唐招提寺を訪れると、金堂に取り付けられた鴟尾に遠い昔の人々のドラマを思い描くことができ、さらに楽しむことができるので、おすすめです!

 

(参考:「古寺巡礼 8 唐招提寺」西山明彦 淡交社、「天平の甍」 井上靖 新潮社)

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